豊かな生態系や自然環境は、生物多様性によって維持されている。私たちはその恩恵によって命をつないでおり、生物多様性の保全と持続可能な利用は人類の生存に関わる重要事項である。
東亜建設工業はこれまでたくさんの社会基盤の整備に携わってきた。さまざまな仕事との出会いのなかで地球の息吹にふれ、自然の恵みやそれを支える多様な生物の営みのすばらしさを実感してきた。これらの経験とこれまで磨いてきた知恵と技術を調和させ、生物多様性の恩恵を受ける一員として、東亜建設工業は未来にこの恵みを伝えていく。
事業活動に伴う生物多様性への影響に十分配慮し、自然資本を守り活かす持続可能な社会の実現に貢献する。
国や地域に適用される生物多様性に関わる法令等を遵守し、高い倫理観をもって事業活動を行う。
建設事業を行う地域の生物多様性に配慮した設計・施工等を実施するとともに、調達においても生物多様性の保全と持続可能な利用を推進する。
教育などを通じて、生物多様性を基盤とする恵みやその損失によるリスク等に対する意識向上を図り、生物多様性に配慮した事業活動を推進する。
生物多様性に関連する研究開発を推進し、生物多様性の保全と持続可能な利用に貢献する。
生物多様性にかかわる情報を発信するとともに、ステークホルダーとコミュニケーションを図る。
以上
2010年7月5日策定
2024年5月30日改訂
現在の私たちの暮らしと将来の世代の繁栄は、自然がもたらす生態系サービスのレジリエンスにかかっています。企業の事業活動は、様々な自然や生物多様性に依存し、影響を及ぼしています。このため、企業は自然を戦略的リスク管理の課題として捉える必要があります。また一方で、企業には、気候変動対策や環境負荷を低減する技術やサービスを提供し、自然資本の保全・回復に貢献することが期待されています。
当社は、2010年に生物多様性行動指針を策定し、地域の生物多様性に配慮した調達や設計・施工、生物多様性の向上に資する研究開発等に取り組んできました。自然資本を守り活かす持続可能な社会の実現に貢献できるよう、当社の事業活動における自然関連の依存、影響、リスク、機会を把握し、各対応策に取り組むとともに、TNFDの提言に沿った情報開示を進めてまいります。
東亜建設工業は、ISO26000などの国際基準やSDGs、ESG社外評価機関の調査やステークホルダーとのコミュニケーション等を参考に環境・社会課題を抽出し、ステークホルダーにとって重要度・関心度が高く、かつ、当社にとっても重要度が高い課題のうち、とくに優先して取り組むべき項目を重要課題(マテリアリティ)として特定し、重要指標(KPI)と目標を設定して、その達成を目指して取り組んでいます。
本開示では、直接操業として国内の建設事業(土木、建築)、 上流および下流のバリューチェーンについて開示しています。
建設事業(土木、建築)の拠点である建設現場
TCFD開示に既に含まれている自然関連課題の情報を、TNFD開示と関連づけることが、とくに求められており、サステナビリティ関連の開示統合に向けて今後検討を進めてまいります。
短期:2025年度〜2027年度、中期:2028年度〜2034年度、長期:2035年度以降を想定しています。
東亜建設工業グループの企業行動規範および人権基本方針に示すように、事業活動において地域との対話・協議の充実を図り、信頼を得て、長期的な企業価値の向上を目指しています。
東亜建設工業グループでは、気候変動や生物多様性などに関する取組みについて、経営層が定期的に確認し、議論するために、ESG委員会を設置し、年2回開催しています。ESG委員会は代表取締役社長を委員長とし、経営層で構成され、気候変動や生物多様性などに関する審議を行い、その結果や取組み状況などが取締役会に報告されます。
気候変動や生物多様性など環境に関する重要課題や重要指標は年1回、ESG委員会において見直され、その結果に基づいて各本部・支店・グループ会社が対応を立案し、実施します。取組みの進捗状況については、定期的にモニタリングされ、ESG委員会に報告されます。その他にも環境課題において議論すべき事項がある場合には、適宜付議し、対応について検討をしています。
当社グループでは、TNFD情報開示フレームワークに沿って、自然関連への依存や影響、リスクや機会などについて分析・評価を行いました。本開示では、当社グループの事業活動のうち、生態系サービスとの接点が多いと考えられた国内の土木・建築事業(直接操業)と、原材料の採取(上流)および解体(下流)を対象としました。
自然リスク評価ツールENCOREを使用して建設事業における重要性を把握し、自社のバリューチェーンにおける生態系サービス等への依存や影響について、下記のヒートマップを作成しました。その結果、とくに降雨パターン調整サービスに依存し、また攪乱(騒音、光害等)や淡水域生態系の利用による影響が大きく、施工・解体に伴う汚染物質の管理が重要であることを把握しました。
自然リスク評価ツールENCOREで抽出した自然関連の依存・影響をもとに、当社の事業活動における自然関連のリスク・機会を特定しました。今回対象とした事業活動においては、降雨パターン調整機能に依存度が高かったことから、とくに物理シナリオにおける影響度が大きいと評価しました。今後見込まれる自然災害の増加や生態系サービスの低下等に伴うコストの増加に備え、リスク管理の強化など対応の実効性を高めてまいります。また、生物多様性の保全や向上に関する相談が増える可能性が高いことから、ブルー・グリーンインフラに関するイノベーションの推進やネイチャーポジティブに資する技術の開発に引き続き努めていきます。
現在、直接操業の建設現場が増える状況にあり、今後開示を進めてまいります。
ESG委員会を中心としたリスク管理体制を整え、取締役会および執行側と連携し、自然関連のリスクや機会に関する審議を行い、リスク対応の継続的改善に努めています。
リスクマネジメント事務局において、当社の事業活動に関連する生態系サービス等への依存や影響を年1回見直します。その検討結果や自然関連の外部情報および第1線から定期的に報告されるリスク対応結果に基づいて、リスクマネジメント小委員会が自然関連のリスクや機会を特定・評価します。年2回開催されるESG委員会において、同小委員会が提案する自然関連のリスクや機会の優先順位付け等が審議されます。取締役会には、ESG 委員会や内部監査室から自然関連のリスクや影響への対応状況が報告されます。また、審議結果に基づいて第1線の各本部・支店・グループ会社が、リスクや機会への対応策を業務に反映させ、実行しています。
当社の事業活動における自然関連の依存や影響、リスクと機会を十分把握し、適正に管理するため、測定指標や目標を設定し、取組みを推進しています。