- ◆構造物に設置した各種センサーの情報からコンクリート構造物の変状を追跡することにより、
アセットマネジメントを強力に支援
- ◆維持管理業務の省力化を実現
- ◆データ回収から記録管理までの自動化を実現
- ◆専門技術者のノウハウを反映したセンサーの最新情報を、インターネット経由でユーザーへ提供

東亜建設工業は、このたび、コンクリート構造物のアセットマネジメントを強力に支援するためのシステム「SAMSWING(サムシング)」を開発しました。
本システムは、コンクリート構造物の広い範囲あるいは主要な部分に劣化変状を検知する複数のセンサーを張り巡らせ、そのセンサーのデータを日々自動的に回収・整理して、整理された維持管理情報をインターネット上でユーザーに提供するシステムです。センサーに異常が感知された場合には、専門技術者がデータを評価して助言するとともに、維持管理情報と併せて異常を感知したセンサー情報も提供します。
このシステムを活用することにより、コンクリート構造物の健全性や劣化の進行状況が継続的に把握できるため、構造物の資産価値低下を未然に防ぐとともに、維持管理コストを低減することが可能になります。また、コンクリート構造物の劣化現象や維持管理に詳しくない構造物の所有者・管理者(ユーザー)でも、専門技術者からのアドバイスを参考に、的確かつ経済的に構造物の維持管理を行うことが可能になります。
※SAMSWING(Sensor aided maintenance system with information technology)
●システム開発の背景
近年、コンクリート構造物の維持管理の重要性が認識され、点検や補修などの維持管理に多くの労力が傾注されるようになってきました。さらに、コンクリート構造物は人々にとって社会資本として重要な資産であり、資産価値を低下させないように管理することの重要性も認識されるようになってきました。
このような状況のなか、比較的簡便にかつ的確な維持管理の手法確立が強く求められるようになってきています。
●「SAMSWING」の特長
本システムは、コンクリート構造物の維持管理の省力化・効率化を目的として、構造物に設置した複数のセンサーから得られる連続的なデータと、異常値が得られた時の専門技術者による具体的な対処方法を、インターネット技術を介して構造物所有者・管理者(ユーザー)に提供する技術です。[ 図1を参照(PDF:80K) ]
このシステムは、これまでの維持管理方法に比べ以下の特長があります。
- 連続的な情報収集が可能
コンクリート構造物にセンサーを設置すれば、その後は連続的に情報収集ができるので、センサーを設置した時点での構造物の健全性や劣化の進行状況などの状態が分かっていれば、その後の構造物の変化を把握することができます。
- 高度な診断技術を持つ専門技術者がサポート
センサーの値は、構造物の劣化に関わる変化だけでなく、外気温の変化や降雨など環境条件の影響も受けるため、得られたデータは総合的に評価する必要があります。
データの評価方法については、高度な診断技術を持つ専門技術者がサポートするので、ユーザーは安心して構造物の維持管理を実施することができます。
- 構造物の劣化の予兆をつかむことが可能
連続的な情報が得られるので、構造物の劣化の予兆をつかむことができます。
第三者に対しての影響度が大きい構造物では、事前に対策を行うことができます。
●「SAMSWING」の概要
本システムの流れは以下のようになります。[ 図2を参照(PDF:108K) ]
- センサーを複数本設置、計測データを自動収集
コンクリートの各種劣化が顕在化しやすい箇所、または目視により構造物の変状を確認できない箇所(下水道処理施設などの暗渠、桟橋下面,高所など)に、予想される劣化現象を検知できる数種のセンサーを複数本設置し、センサーからの計測データ(電位、電流、抵抗値など)を現地に設置したデータロガーに自動収集します。データロガーの電源は太陽光発電により、情報の伝達は携帯電話により行うことができるため、設置場所に制限を受けることはほとんどありません。
- 遠隔操作によるデータ回収
現地で収集されたデータは、センサー情報管理センターのパソコンに自動回収されます。
- 複数のセンサー情報管理の簡便化
回収されたデータは、各種センサーの特性に応じてデータを整理できるソフトを介して整理されるので、センサー情報管理センター側の専門技術者は即座に複数のセンサー情報を評価することができます。
- WEB画面を用いた計測情報の表示
ユーザーや専門技術者が複数のセンサー情報を日々個別に確認するには多大な労力を費やすため、インターネットを利用してWEB画面上にセンサー情報を表示します。これにより、ユーザーと専門技術者とはデータを共有することができます。WEB画面上では、構造物の各部位に設置された複数のセンサー情報を一覧表示するので、一度に確認することができます。
- 「しきい値」を設定することにより、重点点検部位を効率的に維持管理
WEB画面上に複数のセンサー情報を一覧表示する時、センサーの特性に応じた「しきい値(劣化進行に応じた限界値)」を専門技術者が事前に設定し、センサーがその「しきい値」を超えない状況を計測している時は「緑色」、「しきい値」に近付くまたは短期的に「しきい値」を超える傾向を計測した時は「黄色」、「しきい値」を長期的に超える状況を計測した時は「赤色」を表示するようにすることで、構造物の全体的な変状を把握することができ、重点的に点検を行う必要がある部位を特定することができます。
「しきい値」を超えたセンサー付近を目視などにより重点的に点検することで、効率的な維持管理を行うことができます。
●今後の展開
今回開発したコンクリート構造物の維持管理支援システム「SAMSWING」を活用することにより、コンクリート構造物の維持管理の省力化・効率化を図ることが可能になりました。また、長期的な点検に要する労力・費用を低減することも可能になりますので、本システムへのニーズは高まるものと期待されます。
当社は今後、コンクリート構造物の所有者・管理者と連携を取りながら効率的なシステムの開発に取り組むとともに、様々な構造物における本システムの適用性の検討や各種劣化に対する精度の高いセンサー開発を進め、維持管理に対する技術開発に注力してまいります。