革新的社会資本整備研究開発推進事業
防波堤整備等の生産性向上に資する「浮遊ケーソンの動揺低減技術の研究開発」を推進
〜関東地方整備局「実海域実験場提供システム」を活用し、
茨城港で実物ケーソンによる実海域実験を実施〜

2022年09月26日

東亜建設工業株式会社(東京都新宿区:代表取締役社長 早川毅)は、国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 港湾空港技術研究所の革新的社会資本整備研究開発推進事業に採択された防波堤整備等における生産性向上に資する「浮遊ケーソンの動揺低減技術の研究開発」について、本年夏に、茨城港常陸那珂港区で実物のケーソンを使用した実海域実験を実施いたしました。

図1 減揺タンクを搭載した浮遊ケーソンのイメージ

背景

近年、日本国内の港湾施設において、海上輸送の需要増加と貨物船の大型化等に対応するための国際物流ターミナルの整備や、防災・減災を目的とした津波対策等の観点から、防波堤の延伸や新設が進められています。外洋に面した海域では、波浪条件が厳しいため、ケーソン式の防波堤や護岸を築造する際には、巨大な起重機船を用いず、ケーソンを浮かべて施工場所まで小型の船舶で曳航して据え付ける方法が多く採用されています。ただし、波浪条件によってはこの浮遊ケーソンが大きく動揺するため、ケーソン上の作業員の安全性の確保が懸念されたり、ケーソン据付の作業工程が制限を受けることで、作業船等の工事に必要な機材が拘束されたりする課題がありました。
そこで、当社は、これらの課題を解決するため、国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所港湾空港技術研究所の革新的社会資本整備研究開発推進事業を活用し、「浮遊ケーソンの動揺低減技術の研究開発」に取り組んでいます。この事業は、国土強靱化や生産性の向上等に資するインフラに関する革新的な産・学の研究開発を支援するもので、当社は2019年度第1回公募において採択され、国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学(水谷法美教授)と共同で研究開発を行ってきました。
これまでの3年間の基礎的な検討を終了し、本年夏に、国土交通省関東地方整備局の実海域実験場提供システムを活用し、茨城港常陸那珂港区の東防波堤に用いられる実物のケーソンを使用して、減揺タンクを用いた浮遊ケーソンの動揺低減効果について実海域実験を実施しました。

実海域実験の概要

実験概要

当社が考案した浮遊ケーソンの動揺低減方法は、ケーソン上に減揺タンクと呼ぶ「内部に水を薄く張った長方形の容器」を上下2段で格子状に複数配置して(図1)、減揺タンク内の自由水が波浪によるケーソンの傾きによって移動することで、揺れを抑える力が発生しケーソンの動揺を低減させます(図2)。これまで、名古屋大学の平面水槽「三次元高潮津波シミュレーションシステム」と、当社技術研究開発センター(横浜市鶴見区)の造波水路における小縮尺の水理実験や、港湾空港技術研究所の「大規模波動地盤総合水路」を借用した大縮尺の水理実験を実施し、減揺タンクによる動揺低減効果を確認してきました。また、各地でケーソンの寸法が異なるため、それぞれのケーソンに最適な減揺タンクの寸法とタンク内の自由水量を検討できる数値シミュレーションプログラムの開発も行っています。
今回の実海域実験は、実際の海域において実物のケーソンを使用し、減揺タンクによる動揺低減効果を実証することが主な目的です。外洋からの波が直接作用する港口近くの実験海域に、減揺タンクを設置したケーソンを浮かべ、その動揺を測定しました(図3、図4)。そして、ほぼ同じ波浪条件になるタイミングで、従来通りの施工方法に相当するタンク内の注水がない条件(注水なし)と、今回の技術であるタンク内に水を薄く張る条件(注水あり)との比較を行いました。

図2 減揺タンクによるケーソンの動揺低減の原理

図3 実験位置図(茨城港常陸那珂港区)

図4 実海域実験の様子

検証結果

実験では、浮遊ケーソンの長手方向に傾斜するPitchと呼ばれる動揺が卓越するように、ケーソンの長手方向を波向に一致させ計測を行いました(図5:Yを軸とした回転=X方向の前後の揺れ)。結果として、今回の条件ではおよそ30%の動揺低減効果を確認することができました。これにより、実海域において実物のケーソンでも減揺タンクを利用することによって動揺を低減することが可能であることが実証されました。

今後の展開

実海域実験の結果を取りまとめ、減揺タンクの製作コスト削減や減揺タンク設置・撤去の工程の短縮等を行い現場に導入し得る技術へとブラッシュアップを続けていきます。将来的にはケーソンの自動据付等のICT技術との連携によるケーソン据付のDXを推進し,防波堤整備等における生産性向上を通じてインフラ整備に貢献できるよう鋭意努力する次第です。

図5 減揺タンクによる動揺低減効果

本件に関するお問い合わせ先

東亜建設工業株式会社 経営企画本部 経営企画部広報室 北川 欽一
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