2021年09月13日
東亜建設工業株式会社(東京都新宿区:社長 秋山優樹)は、既設の桟橋鋼管杭の杭頭部付近に腐食あな※が生じた場合においても、桟橋上部工の撤去や大規模な構造変更を伴う工事を行うことなく施設を供用しながら補修することができ、建設当初の耐力まで回復させることのできる補修技術「鋼板接着併用型タフリードPJ工法」を開発しました。
※鋼管杭の腐食が著しく進行して生じた貫通孔や開口を「腐食あな」または「あな」と表現しています。
*タフリードPJ工法(Tough and Flexible Advanced Mortar Method for Pile Jacketing)は、当社が開発した桟橋鋼管杭に対して高強度繊維補強モルタルを用いて補修する工法です。本工法に用いる高強度繊維補強モルタルを「タフリード」と称しています。
旧基準に基づき設計された桟橋には、建設当時の設計で想定していたよりも速い速度で腐食が進行してしまったり、さまざまな事情により設計耐用期間を超えて供用を続けているものもあり、近年になって鋼管杭の腐食が著しく進行した事例が散見されています。特に、杭頭部付近の鋼管杭は、海水作用と地震・船舶接岸等の荷重作用の影響により劣化や損傷が生じやすく、この部位で鋼管杭が著しく腐食した場合には桟橋の安全性に大きく影響します。この場合、これまでは桟橋上部工を撤去した後に鋼管杭を補修した上で桟橋上部工を再構築する、または新たに別の部材を追加する方法(例えば、水中格点工法)を適用するなど、大掛かりな対策の実施が必要でした。
当社は、このような桟橋の供用停止を伴う補修方法しかなかった課題を解決すべくタフリードPJ工法を国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 港湾空港技術研究所、國枝稔 岐阜大学教授、岩波光保 東京工業大学教授と共同で開発し、2015年4月にプレスリリースしております。当初開発したタフリードPJ工法は、既存の鉄筋コンクリートを用いた補修技術を改良したもので、適用範囲として、既設鋼管杭の残存耐力を期待できること(鋼管杭の残存肉厚6mm以上)を前提とした工法でした。そのため、既設鋼管杭の残存耐力を期待できないような著しい腐食やあなが生じている条件では、適用することができませんでした。
そこで、当初開発したタフリードPJ工法では適用できなかった条件に対しても確実な補修効果が得られる工法として、既存の鋼板を用いた鋼管杭の補修技術を改良した「鋼板接着併用型タフリードPJ工法」を開発しました。
本工法は、杭頭部付近の鋼管杭に著しい腐食が生じている場合に、既存の鋼板を用いた補修では補強鋼板上部の定着が確保できない(溶接長が確保できない)課題を、タフリード(高強度・高靭性・高耐久性を併せ持つ繊維補強モルタル)を用いることで解決した工法です。既存の鋼板を用いた補修技術と同様に、杭頭部に発生する断面力に対して既設鋼管杭の耐力不足を補強鋼板により補う設計思想ですが、タフリードによる巻立てと補強鋼板の上端を杭頭プレート下面にすみ肉溶接を行うことにより、補強鋼板上部の定着を確保した点に、大きな特長があります。
タフリード巻立て部は補強鋼板と上部工を接合する重要な部材であるため、タフリード巻立てと補強鋼板はシアキー(ずれ止め)により、タフリード巻立てと上部工はアンカーボルトにより、それぞれ定着させて一体化します。
なお、タフリード巻立て部より下方の補強鋼板に対しては、既存技術と同様、防食工を適用することができます。
鋼板接着併用型タフリードPJ工法の概要
巻立て部詳細
タフリード注入状況
本工法による巻立て部詳細
(耐力検証実験の試験体製作状況)
試験体完成
複数微細ひび割れ発生状況
過酷な環境下に曝される桟橋のリニューアル工事に本工法を幅広く活用していただけるように、更なる施工性の向上やコストダウンを推進していきます。