2020年12月15日
東亜建設工業株式会社(東京都新宿区:社長 秋山優樹)は、国内でも最大級の能力を持つポンプ浚渫船「第三亜細亜丸」の浚渫能力と環境性能をさらに向上させるため、大規模なリニューアルを行いました。
今回のリニューアルでは浚渫ポンプを欧州製の最新型ポンプに換装することで浚渫土砂の排送能力を大幅に向上させています。また、主機関やモーター等の主要設備を更新することでエネルギー効率を改善し、環境負荷も低減させています。
ポンプ浚渫船「第三亜細亜丸」
(1)排送能力の向上
浚渫ポンプ用主機関の出力を8,000PSから9,000PSへ増強し、浚渫ポンプを効率の高い欧州製の最新型ポンプに換装することで、国内のポンプ浚渫船では最大の排送能力を発揮できます。土質がシルト・粘土質であれば、国内では今まで中継船が必要とされていた10km程度の排送を本船のみで行うことが可能です。
(2)環境負荷の低減
最新型の浚渫ポンプ用主機関はIMO(国際海事機関)排ガス2次規制に対応しており、NOx(窒素酸化物)、SOx(硫黄酸化物)の排出量を低減していることに加え、燃費についても旧型機の同負荷時と比べ、平均8%程度向上しています。また、カッターモーターやスイングウインチモーター等の電動機についても、効率の良いインバータ制御にすることで燃費を向上し、船全体のCO2排出量を削減しています。
(3)施工の効率化
排送能力の向上により、リニューアル前と比べて含泥率を高め、土厚を増やした浚渫が可能となりました。さらに、複数の施工管理システムを用いて、含泥率や水中ソナーによる3次元地形データをリアルタイムに可視化する「オペレーター支援機能」により、掘削状況と連動したラダー制御が可能となり、常に効率的な浚渫を継続することができます。加えて、浚渫ポンプ用主機関の回転数を電子制御にすることで、施工時の急激な負荷変動に対しても自動で回転数を制御し、安定した施工の継続と過掘りの防止が可能です。
(4)安全設備の充実
船舶レーダーや船舶識別装置AISに加えて、人工知能AIと高感度カメラを活用した船舶監視システムを装備し、接近する船舶の情報を警報及び映像でいち早く操船者に知らせることができます。特に一般船舶(小型船)が多く航行する現場において、航行監視の効率化、負担軽減が期待できます。
(5)設備の見える化
温度や圧力、回転数等の情報を含むカッターや浚渫ポンプ、主機関、発電設備の運転状態をネットワーク化することにより、各設備の運転状態・劣化状態等をクラウド上で管理・共有できるようにしました。これにより、関係者が運転状態をリアルタイムに情報共有できるため、保守管理における省力化が図れます。
設備状態クラウド管理概念図
国内の港湾では、船舶の大型化による効率的な物流を維持するため、船の安全な航行に必要な水深の確保が求められており、浚渫工事の重要性は今後も継続すると思われます。当社は今回増強した「第三亜細亜丸」の浚渫能力を活かして、効率的かつ環境に配慮した施工を行って参ります。
また、将来直面する作業船オペレーターの減少に対応すべく、各設備のネットワーク化によって、施工・運転状況の可視化やデータの収集による熟練オペレーターのノウハウの数値化に取り組み、オペレーターの早期育成と省力化を可能とする支援システムを構築していきます。
当社はこれからも様々な新技術の活用によるインフラ整備を通じてSDGsに貢献して参ります。
船体主要寸法 [m] | |||
---|---|---|---|
全長 | 全幅 | 深さ | 喫水 |
78.0 | 19.5 | 5.5 | 4.1 |
出力 [PS (kW)] | ||
---|---|---|
動力 | 浚渫ポンプ | カッター |
ディーゼル | 9,000 (6,600) |
815×2 (600×2) |
能力 | |
---|---|
浚渫能力 [m3/h] |
排送距離 [m] |
600 ~ 2,200 |
6,000 ~ 10,000 |
浚渫深度 [m] | |
---|---|
最大 | 最小 |
25.0 | 5.0 |