鉄骨差込み接合による「プレキャスト桟橋上部工の施工合理化工法」を開発

2020年08月28日

海上施工における鋼管杭の打込み誤差に柔軟に対応できる
プレキャスト桟橋上部工と鋼管杭の鉄骨差込み接合構造を開発

東亜建設工業株式会社(東京都新宿区:社長 秋山優樹)は、海上桟橋の上部工を構成する杭頭部、梁、床版のすべての部材をプレキャスト化するにあたり、鋼管杭と上部工の接合に“鉄骨差込み接合"を採用し、海上作業を省略・簡略化することにより、施工性および安全性の向上、並びに工程短縮等の全体最適化を図ることができる「プレキャスト桟橋上部工の施工合理化工法」を開発しました。

工法開発の背景

港湾構造物の海上コンクリート施工では、特殊技能を有する作業員が必要で多大な労力を要すること、工事進捗が海象条件等に大きく左右されることから、海上作業の省力化と安全性の向上が喫緊の課題となっています。近年では、i-Constructionに対する取組みの一環として、コンクリート工の生産性向上に対する検討が行われ、港湾構造物のプレキャスト化も推進されています。

また、桟橋上部工のような複合構造物では、部材間の接合(特に、鋼管杭と上部工の接合)が重要となります。しかし、海上での鋼管杭の打込みでは高い精度を要求することが難しいことから(一般に、設計に対して平面位置で±10cm,高さ位置で±5cm、傾斜2°で管理)、桟橋の上部工築造においては、大掛かりな支保工を構築して現場打ちコンクリートにより施工するのが一般的でした。近年、杭頭部をプレキャスト化して施工する事例も増えていますが、施工誤差の吸収や海上作業の削減面で課題がありました。

そこで、海上桟橋の上部工を構成する杭頭部、梁、床版の部材をプレキャスト化し、鋼管杭と杭頭ブロックの相対的な位置のずれに対し柔軟な設計を可能とする“鉄骨差込み接合"を用いた「プレキャスト桟橋上部工の施工合理化工法」を開発しました。

工法の概要

本工法は、海上桟橋の上部工築造において、コンクリート工の大半の作業を海上ではなく陸上で行うものです(図1)。この点においては、従来のプレキャスト施工と大きな相違はありませんが、港湾の海上桟橋では類のない“鉄骨差込み接合"の採用により、鋼管杭の施工誤差を吸収できるため、施工の合理化や安全性の向上を可能とします(図2、図3)。

“鉄骨差込み接合"は、海上に打ち込んだ鋼管杭の内部に、杭頭ブロックから突出させた差込み鋼材を挿入した後に、中詰コンクリートを打設することで杭頭ブロックと鋼管杭を一体化させる接合であり(図2)、差込み鋼材と中詰コンクリートからなる差込み部材を介して“上部工と鋼管杭"の荷重伝達を行うものです。この接合部の設計は、鉄道構造物等設計標準・同解説「コンクリート充填鋼管柱の接合部(鉄骨鉄筋差込み方式)」に記載の設計法に準じて行います。

図1 本工法のイメージ
注)図中の(1)〜(6)は施工順序を表す。

  • 図2 本工法の杭頭接合構造

  • 図3 平面誤差の吸収(接合部断面)

工法の特長

杭の平面・高さ位置の誤差吸収に対して柔軟な設計が可能

“鉄骨差込み接合"は、差込み鋼材と杭内側の離隔により杭打ちの平面位置の誤差を吸収できるため、離隔の設定値を調整することで施工条件に応じた柔軟な設計が可能です。また、杭頭ブロックの高さ調整は、杭天端の測量結果に応じて陸上にて設置する高さ調整プレートにより行うことで、海上作業は測量のみとなり、海上作業を大幅に省略できます。

大組ユニット化による工程短縮等

杭頭ブロックは、陸上にて梁ブロックを連結させた大組ユニットを施工条件に合わせた自由な形状で構築することで、海上作業を削減し工程短縮を図ることもできます。

今後の展開

本技術は、鋼管杭と上部工の接合部となる杭頭部コンクリートをプレキャスト化して、これまでの現場打ちによる施工において煩雑かつ多大な労力を要していた海上作業を大幅に軽減させ、現場作業員の省人化と安全性向上を飛躍的に推進させるものです。現在、接合構造に関する要素実験や実大試験等による性能評価手法の検討は完了しており、今後は杭頭部の構造のみならず梁や床版等も含めた一連のプレキャスト桟橋構築作業の合理化を目指し、ICT導入等により機械化・自動化技術に発展させることを想定しています。また、桟橋施工全体の合理化技術の完成に向けて、現場実証実験や試験施工等を経て実用化を進めていく予定です。

本件に関するお問い合わせ先

東亜建設工業株式会社 経営企画部広報室 北川
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