鋼板セル等の据付を高精度に誘導
「高精度リアルタイム3D位置誘導システム」を開発

2016年04月21日

東亜建設工業株式会社(東京都新宿区:社長 松尾正臣)は、2台のノンプリズムトータルステーションと傾斜計を使用し、港湾構造物の据付をリアルタイムかつ高精度に3次元誘導する「高精度リアルタイム3D位置誘導システム」を開発しました。

開発の背景

鋼板セル工法は、護岸や岸壁などの港湾構造物を作る代表的な工法の1つです。円筒形状の鋼板「セル」を海底に並べ、隣接するセルを円弧形状の鋼板「アーク」で連結することで、護岸や岸壁を築造します。鋼板セルは、予め工場やヤードで製作して現場へ運搬・設置するため、海上作業時間が大幅に短縮され、急速施工が可能です。

鋼板セルを据え付ける際は、鋼板セル上部に2個のターゲットを設置し、2台の自動追尾型トータルステーションでそれぞれ測量して平面位置と高さ、回転量を求めると共に、傾斜計を用いて鋼板セルの姿勢を計測し、それらのデータを統合して据付位置の誘導を行っています。しかし、現状のシステムでは、自動追尾型トータルステーションの性能上、2〜3秒間隔でしかデータの更新ができず、波浪があり鋼板セルが動揺している場合など、瞬時の位置を捉えられないという課題がありました。これらの問題を解決するため、当社ではICT技術を駆使した「高精度リアルタイム3D位置誘導システム」を開発しました。

システムの概要

「高精度リアルタイム3D位置誘導システム」は、2台のノンプリズムトータルステーションと傾斜計を組み合わせ、リアルタイムかつ高精度に3次元誘導を実現するシステムです。従来は、使用機器の性能上、2〜3秒間隔でしか計測できませんでしたが、現在では、最短0.05秒間隔で計測可能となりました。そのため、海象条件が悪く、鋼板セルが動揺している場合でも、リアルタイムに3次元の位置及び挙動を捉えた誘導が可能となることから、施工効率及び据付精度が向上します。

なお、施工中の誘導画面では、現在の鋼板セルの位置を濃く描写し、過去の軌跡は透過させて表現することにより、鋼板セルの挙動及び誘導時の軌跡が3次元で把握可能です。また、鋼板セルの3次元設計モデルと比較しながら誘導できるため、数値情報のみと比べて視覚的に誘導がしやすくなっています。

図1 高精度リアルタイム3D位置誘導システム 運用イメージ

図2 鋼板セルの3次元誘導画面イメージ

システムの特長

  • (1) 最短0.05秒間隔で鋼板セルの挙動を捉えることができるため、リアルタイム性に富む誘導が実現でき、海象条件により鋼板セルが動揺している場合でも、施工効率と据付精度が向上します。
  • (2) 鋼板セルの揺れの傾向を詳細に把握することができるため、高精度な据付が可能となります。
  • (3) 設計据付位置との関係を、数値だけでなく3次元表示の映像として見ることができるため、視覚的に誘導がしやすくなります。

今後の展開

既に開発されている鋼板セル中詰時の3次元挙動監視システムとの連携により、効率的で質の高い建設生産システムを構築することを視野に入れたCIMを実現できるものと考えています。

今後、現場への導入を通して実績を積み重ねると共に、i-Constructionへ向けた取り組みとして、更なる施工効率の向上と機能拡充に向けた開発を行います。

本件に関するお問い合わせ先

東亜建設工業株式会社 広報室 清水
TEL:03‐6757‐3821 / FAX:03‐6757‐3830