2014年11月20日
ブラストキー工法
飛島建設株式会社(神奈川県川崎市:社長 伊藤寛治)、東亜建設工業株式会社(東京都新宿区:社長 松尾正臣)の2社は、建築物の耐震補強に用いる工法として、『低振動・低騒音施工による環境配慮型の躯体目荒らし工法』(ブラストキー工法)を開発し、平成26年10月に一般財団法人 日本建築総合試験所より、建築技術性能証明(GBRC 性能証明 第14-17号)を取得しました。なお、本工法は、東洋大学理工学部建築学科 香取慶一准教授のご指導により行った研究開発です。
耐震補強は、既存建物と補強部材との間に接合部を設けて一体化させる工法が一般的です。この間接接合部は、あと施工アンカーとコンクリート表面の凹凸等により形成され、既存建物と補強部材の一体性を高める役割として、既存躯体面を荒らす作業に「目荒らし」という工程があります。この目荒らしは、通常、ピックハンマーを用いて既存躯体面に不規則な凹凸を形成させます(以下、「チッピング工法」)。
チッピング工法は、既存躯体にピックハンマーにより打撃を与えるため、大きな振動や音が発生することに加え、多くの粉塵が生じる等、施工時の周辺環境の悪化を招きます。そのため、チッピング工法は特に居住者が住みながらの補強工事において、苦情の対象となる場合があります。(図-1)
図-1チッピング工法とブラストキー工法の施工イメージ図
本工法は低振動・低騒音に加え、環境に配慮した目荒らし工法を確立することを目的として開発を行いました。本工法の目荒らしは、ピックハンマーを用いず湿式コアドリルを用いるため、既存躯体面に打撃を与えることがありません。また、施工時の粉塵を少なくすることができます。これらのことにより、建物使用者の日常の環境を大きく損なうことなく、建物を使いながら耐震補強を行うことができるようになると考えております。
本工法は、補強部材と既存躯体の接合面に直径50mm程度の円柱状のシアキー(以下、「ブラストキー」)と、あと施工アンカーを併用します(写真-1)。ブラストキーの施工は、コアドリルの先端に専用のビットをセットし、湿式コアドリルで既存躯体を切削します(図-2)。 チッピング工法の場合、以下に示す懸念事項があります。
ブラストキー工法を用いた目荒らしは、これらの状況を改善し、施工者の技能差によらず一定とできることから、目荒らし量の定量評価(設計による耐力を定式化)を可能としています。これにより、ブラストキーの耐力を設計に考慮することが可能となり、あと施工アンカー数量を10%〜30%削減することができます。
本工法の主な適用範囲は、以下の通りです。
騒音・振動低減効果の確認は、飛島建設技術研究所の音響実験棟住宅実験室(RC造3階建て)および、実際の建物(社員寮:RC造地上3階建て)で行いました。ブラストキー工法の施工時の騒音レベルはチッピング工法と比較し、約20〜29dB低減(29〜42%減)でき、振動レベルはチッピング工法と比較し、約27〜33dB低減(32〜39%減)が可能となりました(写真-2)。
構造実験は、実物大の全44体の要素実験により接合面の基本的な構造性能を確認し、地震時の挙動を模擬した繰り返し載荷の接合部実験により非常に有効な接合工法であることを確認しました(写真-3)。
現在までに開発されている耐震補強工法の多くは、目荒らしにチッピング工法を用いているため、振動・騒音等による施工時の周辺環境が損なわれていました。本工法は、低騒音・低振動を実現した環境配慮型の目荒らし工法であることから、施工時の周辺環境を損なわない、建物を使いながらの補強工事が可能となります。また、ブラストキー工法はチッピング工法に比べ、既存建物の損傷低減、あと施工アンカー数量や産廃コンクリートガラの削減等により、20%程度のコストダウンを目指しています。
飛島建設と東亜建設工業は、今回開発した「ブラストキー工法」が集合住宅等の既存建物の耐震改修促進のための一助となることを願っております。また、本工法が多くの方に使われ広く普及できるよう、積極的な営業展開を進めてまいります。
※ ブラストキー工法は、飛島建設株式会社、東亜建設工業株式会社の2社共同で特許出願しています。