海上クレーン作業時の吊荷の動揺を予測する
「起重機船の吊荷動揺シミュレーション」を開発

2014年08月20日

東亜建設工業株式会社(東京都新宿区:社長 松尾正臣)は、海上クレーン作業時の吊荷の動揺を予測する「起重機船の吊荷動揺シミュレーション」を開発しました。

【開発の背景】

外洋工事におけるクレーン作業では、波浪状況が厳しく起重機船の動揺によって作業の安全性や施工精度が確保できず、作業を中止せざるを得ない状況が頻繁に発生します。このため、工事の稼働率の低下が、従来から問題になっています。特に周期の長いうねり性の波浪のもとでは、静穏で作業可能と思われる1メートル以下の波高の場合でも、起重機船の巨大な吊フックや吊荷の振れ幅が数十メートルに及ぶことがあり、クレーン作業の稼働率が大きく低下します。起重機船のフックや吊荷の動揺は、波高や周期などの波浪条件に加えて起重機船の形状や吊荷の位置によっても特性が大きく異なりますが、現状では、波浪観測データや波浪予測データから、現場責任者の経験に基づき作業可否の判断が行われています。

そこで当社は、作業可否の判断について、波浪条件からの経験に基づくものではなく、新たな手法として、波浪の影響を受ける起重機船のフックや吊荷の動揺を定量的に予測し、作業可否を判断できる「起重機船の吊荷動揺シミュレーション」を開発しました。

【「起重機船の吊荷動揺シミュレーション」の概要】

起重機船の吊荷の動揺は、「波浪によって誘起される船体動揺」と「ジブトップ(クレーンの先端)から吊り下げられたフックと吊荷の二重振り子運動」とが相互に影響し合った複雑な動きとなります。「起重機船の吊荷動揺シミュレーション」は、波浪の影響を受ける起重機船のフックや吊荷の動揺を予測するにあたり、船体とフック及び吊荷の運動が一体となった連成運動方程式を導き、その運動を解析するものです。本シミュレーションでは、波浪の影響を受ける起重機船の船体、フックや吊荷の動揺を定量化することが可能です。本シミュレーションを適用することで、吊荷の動揺量から作業限界波浪を推定し、海上クレーン作業の可否を判断することが可能になりました。

起重機船の吊荷動揺シミュレーションの解析フローを図-1に示します。波浪条件や起重機船の規格・形状、フック、吊荷のデータを入力値として設定し、フックや吊荷の動揺量を計算します。図-2にシミュレーションの解析結果の例を示します。シミュレーションでは波浪による起重機船やフック、吊荷の運動をアニメーションで可視化し、フックや吊荷の運動の軌跡をグラフ化することができます。シミュレーションによって求めた吊荷の動揺量から作業限界となる波浪条件を推定し、海上クレーン作業の可否を判断することができます。

またシミュレーションでは、吊荷の動揺に加えて図-3のように起重機船の船体6自由度運動※の時系列解析も出来ます。

なお、シミュレーションの計算結果は、大型模型実験や実海域における実証実験により、その妥当性を確認しております。

【「起重機船の吊荷動揺シミュレーション」の特長】

本シミュレーションの特長は以下の通りです。

  • (1) 船体の動揺とフック、吊荷の動揺が相互に影響する連成運動を解析できます
  • (2) 様々な波浪条件や起重機船の規格・形状に対応した吊荷の動揺を解析できます
  • (3) 船体の6自由度の運動に加え、フック、吊荷の動揺を定量化できます
  • (4) 吊荷の動揺量から作業限界となる波浪条件を推定し、作業の可否を判断できます
  • (5) フックや吊荷の運動をアニメーションにより可視化できます

【今後の展開】

海上クレーン作業の安全性及び稼働率の向上を目標に、本シミュレーションを適用して、起重機船のフックや吊荷の動揺を低減させる対策技術の開発に取り組んでいます。

以 上

本件に関するお問い合わせ先

東亜建設工業株式会社 広報室 清水
TEL:03‐6757‐3821 / FAX:03‐6757‐3830