「既存梁部材の外側補強工法」の性能証明を取得
梁の靱性改善によるせん断破壊遅延型補強

2014年03月31日

東亜建設工業株式会社(東京都新宿区:社長 松尾正臣)、飛島建設株式会社(神奈川県川崎市:社長 伊藤寛治)の2社は、建築物の耐震補強に用いる補強工法として、『既存梁部材の外側補強工法』を開発し、平成26年2月に一般財団法人 日本建築総合試験所より、建築技術性能証明(GBRC 性能証明 第13-26号)を取得しました。

開発の背景

耐震補強を対象とする建物において、既存梁がせん断破壊する場合の補強工法は、一般的に、梁両側の側面および底面をU字形で補強するため、居室内に立ち入り、工事を行います。しかし、特に既存集合住宅の耐震補強は、居住者が住みながらの補強を要求することが多いため、建物外側のみからの補強工法の開発が望まれてきました。本技術は、既存梁部材に対して、居室内に立ち入らない外側(片側)のみの部分的な補強を施すことにより、補強設計で設定する梁の部材変形量(設計クライテリア)までせん断破壊を発生させず、耐力を維持、あるいは耐力を低下させないことを目的とした補強工法です(図-1 従来型補強と本補強工法との比較)

概要

本工法は、梁の片側側面に鉄筋コンクリート造による補強部を設けることを特徴としています。梁側面に一体化した補強部は、柱に接することなく柱際に隙間(本工法では、「エンドカット」と呼ぶ)を設けています。つまり、増設した補強部と柱の縁を切ることで、既存梁の曲げ耐力を上昇させずにせん断耐力のみに寄与することを意図したディテールとしています。これにより、既存梁の補強を施すことによる柱部材への影響を極力防ぐようにしています。従来の既存梁の補強工法では、梁を補強することにより、曲げ耐力が想定以上に上昇してしまう場合が多く、梁の取り付く柱がせん断破壊してしまう可能性がありました。本工法では、既存建物の崩壊モードを大きく変えないで補強できることを特徴としています。

なお、既存梁と補強部は、あと施工アンカーのみで一体化しており、接続界面に目荒らしを行う必要がないことから、施工時の振動、騒音および粉塵の発生を低減可能な構造になっています(図-2補強方法の一例)

補強設計法としては、@耐震診断を用いた静的設計手法(F値の規定)、A時刻歴地震応答解析による動的設計手法(復元力特性の規定)による2種類の設計法の選択を可能としました。

適用範囲

本補強工法の主な適用範囲は、以下の通りです。

  • (1) 本工法は、鉄筋コンクリート造または、鉄骨鉄筋コンクリート造の既存建物に対する耐震補強を対象としている。
  • (2) 本工法は、矩形梁、スラブ付き梁または腰壁・垂れ壁付き梁に適用することができる。
  • (3) 本工法を適用する既存建物のコンクリート強度は13.5N/mm2以上とする。
  • (4) 本工法を適用する既存建物のコンクリート種別は、普通コンクリート、軽量1種コンクリートまたは、軽量2種コンクリートとする。
  • (5) 本工法は、他の耐震補強、制振補強等と併用して用いることを可能とする。

構造実験による性能確認

既存梁のせん断破壊の性状をより正確に知るため、本開発では19体の実物大の梁を用いた構造実験を行い、補強効果を確認しました(写真-1)。その後、FEM解析を行い構造実験結果との整合性を確認し、補強梁の設計式を構築しました。

本補強工法の実施事例(施工例)

昭和40年代に建築された鉄筋コンクリート造5階建ての建物に対して、本補強工法を適用しました(写真-2)。補強工事は、居室内を使用している状況で行われましたが、居住環境に支障はなく、従来の梁の補強工法と比較して、施工効率が良く、工期が短縮可能であることも確認しました。

今後の展開

現在までに開発されている梁の耐震補強工法の多くは、居室内への施工を伴うものが多く、建物オーナーにとって一時引越しが生じるなど負担の大きいものでした。本工法では、施工が完全に外部のみであることから、引越しが必要ありません。また、補強箇所数が減ることにより、振動、騒音および粉塵の低減、施工中の入居者ストレスの軽減、工期の短縮が可能となります。さらに、補強部材の削減により、環境負荷への貢献、コストダウンなどの相乗効果も大きく、なかなか進まない老朽化した集合住宅の耐震改修促進への一助となると考えています。

東亜建設工業と飛島建設は、集合住宅等の既存建築物の耐震改修促進に貢献するために、今回開発した「既存梁部材の外側補強工法」を普及できるよう、積極的な営業展開を進めてまいります。

※ 既存梁部材の外側補強工法は、東亜建設工業株式会社、飛島建設株式会社の2社共同で特許出願しています。

以 上

本件に関するお問い合わせ先

東亜建設工業株式会社 広報室 清水
TEL:03‐6757‐3821 / FAX:03‐6757‐3830