2013年07月05日
東亜建設工業(東京都新宿区:社長 松尾正臣)は、クラボウ(大阪市中央区:社長 井上晶博)と共同で、打込み後のコンクリートの特に鉛直面(垂直面)を長期間にわたり湿潤状態に保つことのできる養生マット「モイスマット(MOISMAT)」を、東洋大学理工学部福手勤教授のご指導のもと開発しました。
コンクリート構造物の品質確保および耐久性向上のためには、コンクリートの打込み後の初期段階でできるだけ長くコンクリートを湿潤状態に保つことが有効です。通常の湿潤養生手法としては養生マット(スポンジタイプなど)や散水・湛水などがありますが、従来の養生マットは保水性が低いために上部からすぐに乾いてしまうなど、型枠取外し後のコンクリート鉛直面を湿潤状態に保つことは水平面に比べて難しいという課題がありました。
このような背景から、コンクリート鉛直面でも長期間にわたり湿潤状態に保つことのできる養生マット「モイスマット」を開発しました。
「モイスマット」は、電子線グラフト重合技術により吸水性加工が施された不織布面と、耐アルカリ性の高いフィルム面とで構成される、コンクリート湿潤養生マットです。電子線グラフト重合とは、電子線を利用して繊維に様々な機能を付与することができる改質技術で、繊維に機能性物質を分子レベルで強固に結合させるので、高い機能を保持することができます。クラボウでは、電子線を用いて拡布状(テキスタイル)素材に連続生産方式でグラフト重合を行う技術をすでに衣料分野で展開しており、今回はそれを建設分野へ初めて適用しました。
「モイスマット」では、基材として用いたレーヨン/オレフィン不織布を構成する繊維に高分子吸水剤を均一に結合させることにより、高い保水機能を付与しました。
また、「モイスマット」の外側にあたる面には耐アルカリ性の高いフィルム加工を施すことで水分の蒸発を抑制し、コンクリートの湿潤状態を長期間保持させることができます。
項目 | 単位 | 物性値 |
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幅 | mm | 1,000 |
1ロール長さ | m | 20 |
1ロールの乾燥時重量 | kg | 4.8 |
1ロールの吸水時重量 | kg | 24.0 |
「モイスマット」は、電子線グラフト重合技術により不織布に均一に結合された高分子吸水剤によって効果的に水分を保持するため、コンクリート面を長期間にわたり湿潤状態に保つことができます。また、外面に加工された耐アルカリ性の高いフィルムにより、湿潤状態をより長持ちさせることができます。
このような湿潤養生の効果により、コンクリート表層部の緻密化を促進させることができ、コンクリートの塩分浸透や中性化などに対する抵抗性が高まるため、コンクリート構造物の品質・耐久性の向上が期待できます。
当社では、室内試験等を実施し、「モイスマット」による高い湿潤養生効果を確認しています。
「モイスマット」は、不織布面全体への高分子吸水剤の均一な加工により高い密着性を有しており、レーヨン/オレフィン不織布を基材にフィルム加工を施した構造により吸水時重量も1.2kg/m²と軽量ですので、鉛直面への設置も含めた現場での作業性に優れています。
コンクリート | W/C=58.6%、スランプ12cm、普通ポルトランドセメント使用 |
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試験ケース | 養生なし、モイスマット、膜養生で比較 |
養生条件 | 材齢2日で脱枠し、材齢14日まで養生(湿潤養生期間:12日間) |
塩分浸透試験 | 10%NaCl溶液に56日間浸漬後、塩化物イオン浸透深さを測定 |
促進中性化試験 | 20℃、60%RH、CO2濃度5%の環境に56日間暴露後、中性化深さを測定 |
透気試験 | 材齢42日にトレント法により透気係数を測定 |
細孔径分布測定 | 表面から深さ15mmまでの試験片に対して、水銀圧入法により測定 |
当該現場では、ハイブリットケーソンのフーチング端部の鉛直面(高さ0.7m、延長21m)の湿潤養生に「モイスマット」を適用しました。ひび割れの抑制、コンクリート表層の緻密性向上を目的として使用し、その効果を確認しました。
今後は、官庁工事・民間工事を問わず、本技術を積極的に適用し、コンクリート構造物の品質向上に貢献していきたいと考えています。
また、本年7月9日〜11日に開催されるコンクリート工学年次大会2013(日本コンクリート工学会主催、愛知県名古屋市)の主要行事として開催されるコンクリートテクノプラザ2013におきまして、クラボウの展示ブースにて本技術を紹介する予定です。
モイスマットは、国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)に登録申請中です。 なお、モイスマットの製造・販売はクラボウが行いますが、本格販売は本年10月からの開始を予定しています。