大型全旋回式杭打船 兼 起重機船「鶴隆」を建造
−港湾施設の大型化、大水深化に対応−

2011年11月25日

東亜建設工業株式会社(東京都新宿区:社長 松尾正臣)は、昨今の世界的なコンテナ船の大型化に伴う、大水深コンテナターミナル等の整備に対応するため、最新の設備を有する大型の全旋回式杭打 兼 起重機船「鶴隆」を建造しました。

近年、経済のグローバル化に伴い、世界的な海上輸送量は年々増加してきており、輸送コストの削減や輸送効率を高めるために、コンテナ船の大型化が急速に進んでいます。この状況に対し、大型コンテナ船が寄港可能な、大水深岸壁を備えたコンテナターミナルの整備が進んでおり、シンガポール、釜山、中国などのアジア諸国では著しいものがあります。

当社は、海外進出後、約50年が経ちますが、これまでシンガポールを中心に、コンテナターミナル等、港湾施設の整備に携わってきました。
コンテナターミナルの岸壁の築造では、コンクリート杭や鋼管杭を海底に打設し、その支持力により、岸壁の強度を保ちますが、コンテナターミナルの大型化が進むにつれ、当社が得意とする海上杭打工事においても、杭が大口径化、長尺化しています。

シンガポールをはじめ、東南アジア諸国の港湾施設の建設において、数多くの杭打ち工事の実績を持つ当社は、中型の固定櫓式杭打船「セマンガット」を所有していますが、建造から40年近く経過しており、船体の老朽化に加え、能力的にも昨今の大型工事に対応することが難しくなってきました。
そこで当社は、東南アジアなど、インフラ整備が進む新興国の建設市場を睨み、港湾施設の大型化に伴う鋼管杭の大口径化、長尺化に対応するために、作業効率に優れ、さらに、600tの吊り能力を持つ大型全旋回式杭打 兼 起重機船「鶴隆」を建造しました。

日本国内をはじめ、海外の港湾施設も、耐震岸壁の強化、大水深化が進んでいます。当社は、2010年3月に、地盤改良専用船として、深層混合処理船「黄鶴」を建造しましたが、この度、建造した「鶴隆」とあわせて、海洋土木の分野で技術力の強化を図り、国内外で競争力を高めていきます。

■「鶴隆」全景

■「鶴隆」概要

【一般位置図】

【主要目】

船体寸法 クレーン能力 杭打能力
全長 全幅 深さ 定格荷重
(主巻)
定格荷重
(第1補巻)
最長
ジブ長
リーダ長 杭径 最大
杭重量
リーダ傾斜
最大角度
76.0m 30.0m 6.0m 600t 60t 59m 80m φ600〜2500mm 100t ±25°
■「鶴隆」の特長
  • (1)新回生電力システムを搭載 ※1

    深層混合処理船「黄鶴」(平成22年3月建造)に搭載した「作業船ハイブリッドシステム」の一環として、新たに『新回生電力システム』を開発・搭載しました。
    このシステムは、機械式ウインチの巻下げ時の力を利用して発電する、新しいエネルギー再利用システムです。(特許出願中)
    このシステムで得られた電力は、雑機器の電力源として補完利用され、エネルギー効率を高めることにより、CO²排出量を削減することができます。

    【新回生電力システム概念図】

  • (2)スライド式リーダ ※2

    本船には、全長80mのスライド式リーダが設置されており、最大74m(最大重量:100t)の長さの杭を、打設角度±25°の範囲で打設することができます。
    また、本船のリーダは、スライド機構により、上下方向に最大19m調整できるため、①障害物をかわして杭を打設することができる ②杭長に応じてリーダの高さを調整することができる ③杭の位置調整が容易になり施工精度が向上するなどの特徴があります。

  • (3)パイルキーパー ※3

    杭径φ600〜2,500mmに対応できるパイルキーパーの開閉は、油圧シリンダーにより遠隔操作できます。

  • (4)ゴンドラ ※4

    作業用足場であるゴンドラは、作業効率向上のため、リーダの左右に1基ずつ設置しています。また、ゴンドラの作業床は、ゴンドラオペレーターが操作盤で角度を調整するができるため、常に水平に保つことができます。

  • (5)油圧ハンマー ※5

    世界中で多くの実績を持つIHC製のS-280をはじめ、様々なタイプの油圧ハンマーを使用することができ、汎用性に優れています。

  • (6)全旋回式ベースマシン

    ベースマシンが全旋回式のため、船体の斜前方、及び側方の杭打作業が可能であり、効率よく杭を打設することができます。

  • (7)起重機船としても使用可能

    杭打作業に必要なアタッチメントを取り外すことで、起重機船(吊り能力600t)として使用することもできます。

以上