防波堤の経済的な設計に関する論文、「海岸工学論文賞」を受賞

2007年01月17日

  • ◆より経済的な防波堤設計に有効な計算手法
  • ◆性能設計に向けて港湾空港技術研究所と共同研究
  • 海岸工学論文賞 授賞式海岸工学論文賞 授賞式

(独法)港湾空港技術研究所と当社による共著論文「大規模水理模型実験結果に基づく防波堤マウンドの期待変形量の計算法と適用例」*1が、海岸工学論文賞を受賞しました。授賞式は2006年11月17日、徳島県・阿南市文化会館にて執り行われました。
2006年に新設された同賞は、海岸工学論文集に掲載された論文のうち、海岸工学における学術、技術の進歩発展に寄与し、独創性および将来性に富むと認められるものに授与されます。受賞論文は英文誌Coastal Engineering Journalに投稿し、広く世界に成果を還元することが推奨されています。

今回は同論文集・第53巻に投稿された論文418編のうち、二段階査読(要旨・全文)による厳正な審査を経て収録された288編の中から、特に優れた3編が表彰されました。海岸工学論文集は年1回、10月に発刊される(社)土木学会の定期刊行物です。有用性の高い独創的な研究論文や国内外における特色ある技術開発・調査・設計・施工・現場実測などの報告が掲載されています。

受賞対象となった研究は、防波堤の沈下検討に関し1998年より港湾空港技術研究所と当社が進めているものです。単なる安全率での評価から、沈下量を定量的かつ確率的に取り扱う性能設計へと発展させ、防波堤の変形量の推定を通じて所定の性能を確保した上で、より経済的な防波堤設計を目指しています。

  • 変形概念図変形概念図
    今回提案した手法は、地盤や波の力のバラツキを確率的に評価した上で、すべり量から防波堤の期待沈下量を算出する
  • 解析図解析図

受賞論文では、土田氏ら*2の提案した防波堤の期待沈下量を予測する手法を改良し、大規模模型実験や弾塑性解析の結果を基に解析目標安全率を設定して、幾つかの被災事例において予測手法を検証しました。その結果、合理的な沈下量を算出する手法であることが確認できました。

  • 大型波動地盤水路での耐波安定実験大型波動地盤水路での耐波安定実験
  • 提案した手法で算出した期待沈下量と実測沈下量の比較提案した手法で算出した
    期待沈下量と実測沈下量の比較

今後は、事例解析を進めると共に、滑動も含めた変形量を考慮できる防波堤性能設計の確立に向けて研究を進めようと関係者一同考えています。「より経済的な防波堤の設計」等の設計面だけではなく、「被災状況の推定」等の防災面でのご要望にも応えていきます。

  • *1:渡部要一、下迫健一郎、浅沼丈夫、稲垣正芳、諫山太郎(2006):大規模水理模型実験結果に基づく防波堤マウンドの期待変形量の計算法と適用例、海岸工学論文集、第53巻、pp.821-825

  • *2:湯 怡新・土田 孝(2000):波圧作用時における防波堤基礎の支持力不足に伴う沈下量の計算法、土木学会論文集 No.645/V-50、pp91-102

<関連ページ>

土木学会海岸工学委員会 第53回海岸工学講演会
http://www.jsce.or.jp/committee/cec/conf/53/index.html


2007年5月29日、同論文は平成19年度の日本港湾協会論文賞を受賞しました。

日本港湾協会論文賞は、(社)日本港湾協会が、港湾の整備および海岸保全に関する優れた論文を発表した個人または団体を表彰するものです。

(追記:2007年6月25日)