耐久性の高いコンクリート構造物の築造を可能とする
チタンシートを用いた表面被覆工法を開発
〜酸性河川中に築造するコンクリート橋脚の侵食対策として初めて適用〜

2006年09月08日

  • ◆チタンシートにより酸性河川水を完全遮断
  • ◆従来の被覆工法に比べて、高い耐衝撃性や耐摩耗性を発揮
  • ◆極めて高い耐久性によりコンクリート構造物の耐用年数を長期化し、
    ライフサイクルコスト(LCC)の低減を実現
  • ◆チタンシートのもつ光沢により美観に優れる
  • チタンシートを用いた表面被覆工法

東亜建設工業は、このたび鉄道建設・運輸施設整備支援機構と検討を重ね、チタンシートを用いたコンクリート構造物の表面被覆工法を開発しました。
従来の表面被覆材料は、下水などの強酸性物質に対する耐久性や、衝撃や摩耗に対する問題、紫外線による劣化などの欠点があり、厳しい環境条件下での適用に制約を受けやすいものでした。
これに対して本工法は、従来の被覆工法では適用できない厳しい環境条件下においても、極めて高い耐久性を有するチタンシートを構造物に接着させることによって、酸性河川水を完全遮断し、同時に耐衝撃性や耐磨耗性を有する被覆工法です。この度、本工法を酸性河川中に築造するコンクリート橋脚の侵食対策として初めて適用しました。

●被覆工法の概要

  • (1)チタンシートは、化学的に非常に安定した自然酸化膜(不動態皮膜)に覆われているため、耐食性や耐候性に非常に優れた被覆材料です。また金属材料であるため高い耐衝撃性及び耐磨耗性を発揮します。
  • (2)工場にてチタンシート表面に硅砂をウレタン樹脂で接着しておくことにより、コンクリートとの一体性を向上させます。またウレタン樹脂の有する柔軟性が外力による衝撃を緩和させる機能を発揮します。
  • (3)エポキシ樹脂でチタンシートとコンクリート構造物を現場にて接着させることで、酸性河川水などの有害因子からコンクリートを保護します。また、水中硬化型のエポキシ樹脂を用いることにより、水中や湿潤面での施工も可能です。
  • (4)チタンシートの継手部分は、継手長を5cm以上確保することで、劣化因子の遮断性が確保できます。(実験により確認済み)
  • 標準的な仕様標準的な仕様
  • チタンシート(白い部分が硅砂面)チタンシート(白い部分が硅砂面)
  • 概要図概要図
  • 東北新幹線青森荒川橋梁に築造された橋脚への適用例東北新幹線青森荒川橋梁に
    築造された橋脚への適用例

●工法の特長

  • (1)耐酸性・劣化因子遮断性
    化学的に安定なチタンシートを用いることで、強酸性の温泉水や下水の作用する構造物に適用可能です。また、塩水の影響を受ける海洋環境での被覆工法としても適用可能です。
  • (2)耐衝撃性・耐摩耗性
    チタンシートをウレタン樹脂とエポキシ樹脂で接着することで、優れた耐衝撃性・耐摩耗性を発揮し、河川や海洋環境での流石・流水・波浪や漂流物によ損傷を受けません。
  • (3)付着性
    チタンシート表面に硅砂をウレタン樹脂で接着させ、さらにエポキシ樹脂を用いてコンクリートに接着させることにより高い付着性を有します。
  • (4)ひび割れ追従性
    ウレタン樹脂の持つ柔軟性により大きなひび割れに対しても追従することができ、被覆材料としての性能を損なうことはありません。
  • (5)ライフサイクルコストの低減
    従来の表面被覆材料を用いる場合に比べて、極めて高い耐久性を有するチタンシートにより構造物の耐用年数を長期に設定することができ、ライフサイクルコストの低減が可能です。
  • (6)美観
    チタンシートを被覆材料として用いているため、光沢のあるきれいな仕上りになります。
  • (7)軽量
    非常に薄いチタンシートを用いるため人力での作業が可能であり、施工性に優れます。また、被覆による重量の増加が軽微であるため構造設計上の制約を受けません。
表面被覆財の性能
項 目 試験方法 性 能

耐酸性

塩酸暴露試験

pH1の塩酸溶液中に6ヶ月間浸漬してもチタンシートの継手部からの酸による侵食は見られない

遮塩性

表面被覆材の
塩化物イオンの
浸透深さ試験
(JSCE-K 524)

チタンシート表面および継手部からの塩化物イオンの浸透は見られない

耐衝撃性

おもり落下試験

先端を丸加工したφ32(L=50cm,W=3.16kg)の丸鋼を16cmの高さから落としても2800回まで損傷は見られない(河川流速1m/secで10kg/個の流石が衝突した場合に相当)

耐摩耗性

磨耗輪による
磨耗試験
(JIS K 7204)

2000回転までほぼ磨耗が見られない

付着性

付着強さ試験
(JSCE-K531)

1.5N/mm2以上(標準養生後、耐アルカリ性試験及び酸性溶液浸漬後)

ひび割れ
追従性

曲げ載荷試験

ひび割れ幅が2.5mmまで追従(供試体の下面にチタンシートを貼り付けた供試体の曲げ試験による)

  • 耐酸性試験の結果耐酸性試験の結果
  • 耐衝撃性試験の結果(流石10kg/個の衝撃)耐衝撃性試験の結果
    (流石10kg/個の衝撃)

●施工実績

東北新幹線、青森荒川橋りょう

・工事名
東北新幹線、青森荒川橋りょう
・工事場所
青森市大字荒川地内
・発注者

鉄道建設・運輸施設整備支援機構 鉄道建設本部 東北新幹線建設局

・請負者

東亜・安藤・丸重特定建設工事共同企業体

・施工場所

酸性温泉水の流れる荒川(pH3程度)の中央部に位置する橋脚

●今後の展開

今後は、構造物の新設・既設を問わず、施工環境として水中部にある部材に対しても、本被覆工法が適用できる施工方法を検討していく所存です。

さらに、温泉環境や下水環境、及び海洋環境などの厳しい環境条件下に築造されるコンクリート構造物や、長期の耐用年数が求められるコンクリート構造物を中心として広く活用していただけるように、更なる施工性向上や施工法の改善によるコストダウンを図っていく方針です。