加振併用型充てんコンクリートによる国内初の施工が完了
―沈埋函などの鋼コンクリート合成構造のコストダウンに威力を発揮―

2005年10月04日

  • ◆従来の高流動コンクリートに比較して品質管理の容易さとコストダウンを実現
  • ◆産官学の共同研究の成果
  • ◆GPS、ネットワークなどのIT技術を組み込んだ施工管理システムの開発・運用

東亜建設工業は、産官学(東亜建設工業、五洋建設、佐伯建設工業、東洋建設、若築建設、早稲田大学、国土交通省国土技術政策総合研究所、独立行政法人港湾空港技術研究所、(財)沿岸開発技術研究センター)による共同研究に取り組み、従来の高流動コンクリートに対して、加振することによって同等の充てん性能を持たせながら、低コストを実現した「加振併用型充てんコンクリート」(以下充てんコンクリートと表記)を開発しました。

当社では、平成16年に本技術により国土交通省近畿地方整備局発注の「大阪港夢洲トンネル沈埋函(4号函)製作工事」にVE提案を行い、技術の妥当性が評価され採用に至りました。その後鋭意準備を進め、平成17年8月に充てんコンクリートによる沈埋函製作部分が無事終了し、国内初の施工実績となりました。

また、本工事では、大量(約7000m3)の充てんコンクリートを安定した品質で打ち込むために、新たに、IT技術を活用した「生コン車のGPS運行管理システム」「打設管理ネットワークシステム」によるトータル打設管理システムを構築し、施工管理・品質管理の高度化、省力化に大きな成果を挙げました。

なお、本技術は特許工法(特許第3157813号)です。

充てんコンクリートによる沈埋函製作
充てんコンクリートによる沈埋函製作

充てんコンクリートの打設
充てんコンクリートの打設

<工事概要>

  • 1)工事名:大阪港夢洲トンネル沈埋函(4号函)製作工事
  • 2)工事場所:堺市築港新町1-5-1 日立造船(株)堺工場(3号ドック)
  • 3)契約工期:自 平成16年3月23日 至 平成17年11月30日
  • 4)充てんコン打ち込み:平成17年7月〜8月
  • 5)充てんコンクリート打込量:約7000m3
  • 6)工事発注者:国土交通省 近畿地方整備局
  • 7)工事請負者:東亜・佐伯・神戸製鋼特定建設工事共同企業体
  • 8)構造形式:鋼コンクリート合成構造沈埋函

●充てんコンクリート開発の背景

沈埋函などに採用されている鋼コンクリート合成構造は、函体の外面及び内面を鋼板で製作し、内部にコンクリートを打ち込んで一体構造とするもので、RC構造に比較して鉄筋・型枠の材料節減とこれに伴う鉄筋・型枠作業の低減が図れ、経済性、施工性に優れた設計手法であり、鋼殻のプレハブ化による工期短縮効果も期待できます。近年、神戸、沖縄、大阪などでの沈埋函製作工事で実績が増えつつあります。施工にあたっては、コンクリート投入口が限定されるため、高流動コンクリートの使用が標準ですが、高度な品質管理が要求されているため、品質管理の容易な新しい材料が望まれていました。

このようなニーズに対応するため、産官学の連携による上記共同研究が組織され、低コストで品質管理の容易な新しい充てん材料「充てんコンクリート」が開発されました。本研究の成果として、(財)沿岸開発技術研究センターより平成16年2月に「鋼コンクリートサンドイッチ構造沈埋函を対象とした加振併用型充てんコンクリートマニュアル」が発刊されました。

●充てんコンクリートの特長

充てんコンクリートは、内部振動機などによる加振を間欠的に併用することで流動性を向上させ、高流動コンクリートと同等の高い充てん性能を発揮できるコンクリートです。

従来用いられてきた高流動コンクリートと比較して以下のような特長を有しています。

1.材料費の低減:
セメント、混和材料の使用量が少ない。ただし、単位容積質量が高流動コンクリートに比較して小さくなるので、高比重を求められる場合には、使用量が増加することもある。
2.特殊性の排除:
JIS規格に近い配合なので、使用材料や製造に関する制約が少ない。
3.品質管理の簡素化:
振動により充てん性を保証するため、品質の許容範囲が広い。
4.施工能率の向上:
練混ぜ時間が短く、施工能率を向上させることが可能。

このようなメリットにより、加振作業などのコストアップ要因はあるものの、製造から打ち込みまでにかかる総費用を高流動コンクリート使用と比較して10〜20%程度削減することが可能です。

流動性からみた充てんコンクリートの特長
流動性からみた充てんコンクリートの特長

充てんコンクリートの流動性 充てんコンクリートの流動性

打設と加振のイメージ
打設と加振のイメージ

充てんコンクリートの打設と加振 充てんコンクリートの打設と加振

●IT技術を活用した施工管理システムの導入

沈埋函本体コンクリートの施工では、多数の部屋に分けられた鋼殻の中に充てんコンクリートを大量打設するため、各室に確実にコンクリートが充てんされるよう、打設を総合的に管理することが重要となります。そのためこれらの管理には、品質性状の安定化とともに、不測の事態などによりコンクリート供給が不安定になった場合の影響を極力抑えるために、生コン車の正確な運行管理が求められます。

そこで、本工事では、運行管理面における情報伝達・共有のツールとして、通信ネットワークを利用した情報を関係者が常に共有できる、新しい打設管理システムを構築・運用することとしました。出荷工場・現場運行管理室・JV詰所には運行管理ネットワークを、また、打設を行う筒先にはPDA(携帯型PC)を利用した打設管理ネットワークを構築し、運行状況の把握及び各室の打設時間管理を行うことにより、可使時間内にコンクリートを確実に充てん出来るよう総合的な打込み管理を行いました。