海藻の繁茂をはじめ、多くの魚介類が蝟集
〜海生生物との共生を目指した溝付ペンタコンを突堤に設置〜

2004年06月23日

  • ◆生物共生機能を備えた消波ブロック溝付ペンタコン
  • ◆大型の海藻が生い茂り、魚介類が群がり集まる
  • ◆キーワードは、生物共生、溝付き、海藻、魚介類

溝付ペンタコン溝付ペンタコン

東亜建設工業と関連会社の東亜土木株式会社(社長:横山 正雄、東京都千代田区 )は、消波機能に加えて生物共生機能をも兼ね備えた新型消波ブロック溝付ペンタコンを開発し、そのブロックを実海域の突堤に一年前に据え付けました。このたび、その経過を調査した結果、大型の海藻が生い茂り、魚介類が群がり集まっていることが分かり、ブロックの生物共生機能の有効性が確認できました。
海生生物との共生を目指して開発した溝付ペンタコンは、ブロック本来の消波機能を損なうことなく、生物の生息しやすい場所や隠れ家を提供することができるので、ブロックの周りでは大型の海藻を中心にした生態系が誕生します。

●背景

近年、自然環境再生の機運が各地で高まり、生態系の保全や再生に関してさまざまな試みが全国で行なわれるようになってきています。従来は、施設や構造物の本来の目的機能のみが求められていましたが、これに加えて生物や生態系に配慮した施設や構造物の計画、設計、施工が求められるようになってきています。海岸、港湾や漁港でも、生物との共生や自然環境再生を考えた施設、構造物の試験や実用化が進められてきています。

このような社会的な背景のもと、当社は関連会社を含め、干潟、藻場等の自然環境再生に向けた技術開発を進めてきています。その一環として、当社と東亜土木はさまざまな形状の消波ブロックを開発し、これまでに全国各地の海域で現地実験を行なってきました。今回ご紹介する溝付ペンタコンは、その中のひとつが本工事に採用されて、突堤に据え付けられたものです。

●溝付ペンタコンの概要と調査結果

ペンタコンは、もともと隅角部など海藻の着生に有利な構造を持った消波ブロックです。溝付ペンタコンは、ブロック本体に付けた溝の角などがこれに加わり、海藻がより固着しやすくなるとともに繁茂しても脱落しにくく、海藻の生育に好ましい構造のブロックとなっています。ブロックに固着した海藻の繁茂を中心に、海藻を餌とするサザエ・ウニ・バテイラ貝が蝟集します。ブロックの溝は、これらの生物が魚類から身を守る隠れ家としても活用されます。また、大型の海藻群落は、群れをなして遊泳する魚類の休息場や隠れ家にもなります。

2003年3月に、千葉県南部海岸の突堤に設置する消波ブロックとして、東亜土木の溝付ペンタコンが採用されました。

ブロック設置一年後の調査結果では、早くもペンタコンの脚部に付けた溝部(長さ:50cm×幅:5〜6cm×深さ:6〜10cm)にサザエ・ウニ・バテイラ貝(シッタカ)等などの磯根資源が集まり、また、ブロックの隅角部には、アラメ、ホンダワラ類の大型海藻が群落を形成し、周辺を小魚が群をなして遊泳しているのが確認されました。溝付ペンタコンを設置したところの海藻の繁茂状況は、近傍の捨石マウンドを設置したところと比べると大変豊富な状況となっていました。海藻が安定した状態に遷移し、豊かな海岸生態系を作っていくことを引き続き確認していきたいと考えています。

●溝付ペンタコンの特長

「溝付ペンタコン」の主な特長は、次の通りです。

  1. 多くの隅角部を有するので海藻が固着しやすく、また繁茂しても脱落しにくい構造です。
  2. ブロック本体に付けた溝が、サザエ・ウニ・バテイラ貝等の磯根資源の隠れ家として活用されます。
  3. 海藻を中心とした生態系が作られます。
  4. ブロックの消波機能は、従来のペンタコンと同じです。

●今後の展開

今後も、当社は関連会社を含め、「海生生物との共生」をテーマに、生物との共生や自然環境再生を考えた施設、構造物のさらなる開発・改善を行なっていき、海岸、港湾、漁港を管理する国や地方自治体をはじめとする関係者の皆様に、さまざまな自然環境再生技術を提案していきます。