中性子利用技術による生コンクリート中の水分量測定装置「アクアモニタ」を開発
〜短時間で簡単に生コンクリートの単位水量を測定〜

2003年12月08日

  • ◆中性子線源を利用した全く新しい生コンクリート単位水量測定装置
  • ◆迅速、簡便、正確を兼ね備えた測定装置

アクアモニタ(プロトタイプ)アクアモニタ(プロトタイプ)

東亜建設工業はこのほど、株式会社エム・ジー・エス(社長:十時 克行、本社:東京都中央区)と共同で、中性子水分計による生コンクリート中の単位水量測定装置「アクアモニタ」(特許出願中)を開発しました。
本装置は、迅速、簡便、正確を兼ね備えた、中性子線源を利用した全く新しいコンクリート中の水分量測定装置です。

●装置開発の背景

近年、メンテナンスフリーと言われていたコンクリート構造物の信頼性が問われる事態が次々と起こり、コンクリートの早期劣化が社会問題化しています。本来、コンクリートは耐久性の高い材料で、計画通りの配合であれば、このような事態の多くは起きなかったとも考えられています。

早期劣化の原因の一つとして、コンクリートの品質管理に、水量検査が必ずしも取り入れられていないことが指摘されていました。その背景として、コンクリート構造物の強度や耐久性は、セメント量に対する水量の割合によって大きく左右されるにも拘わらず、生コンクリートの水量管理を実務レベルで行なう際に求められる水量測定法が、これまで広く普及してこなかったことが挙げられます。

コンクリートの品質向上のためには、工事現場に納入された生コンクリートの水量を、迅速かつ簡便、正確に測定できる方法が求められていました。

生コンクリート中の水量測定法として用いられているものには、高周波加熱法(電子レンジ法)や静電容量測定法などが挙げられます。これらの手法は、測定前に生コンクリートを粗骨材(砂利)とモルタルに分離する作業を行なった後、モルタルの水量を測定するものです。これらの方法では、計測そのものよりも分離作業の方に時間と労力を要します。さらにその作業は、熟練度による測定誤差が大きく、また作業が煩雑であることなどが、工事現場において生コンクリートの水量管理を行う際の問題点として指摘されています。

このようなことから、「迅速」・「簡便」・「正確」を兼ね備えた水分量測定装置が求められていました。

※国土交通省は、コンクリート構造物の品質に影響を及ぼす水分量の問題に対して、コンクリートの品質管理を図る観点から、施工者に生コンクリート中の水量の測定を実施させることなどを柱とする対策をまとめ、関係機関に通知しました(2003年10月2日付)。また、できるだけ早い時期に水量測定要領をまとめるなど、準備が整い次第、全国の直轄工事で一斉に実施する考えです。

●アクアモニタの概要

今回開発したアクアモニタによる単位水量測定は、水素原子の数と生コンクリート中の水分量との関係を利用したものです。

本装置は、中性子線源(252Cf)とヘリウム3(3He)比例計数管およびデータ演算機能を持つ計測器で構成され、従来の生コンクリート中の圧力式空気量試験で用いられる試料と試験容器をそのま使用するため、水分量測定を一連の生コンクリート試験として行うことが可能です。(図1を参照)

■図1 単位推量測定の流れ

単位推量測定の流れ

アクアモニタの原理は以下の通りです。

中性子線源(252Cf)から発生したエネルギーの高い中性子(高速中性子)は、中性子の質量とほぼ等しい水素原子と衝突することで最も効率良くエネルギーを失い、熱中性子に変化して散乱します。容器中に散乱した熱中性子の数は、ヘリウム3(3He)比例計数管によって求まり、中性子線源の照射範囲に存在する水素原子の数に比例することが確かめられています。(図2を参照)

このような原理を利用して、熱中性子数と全水量の関係式から、計測した熱中性子数に相当する容器中の水分量を求めることができます。(図3を参照)

  • ■図2 熱中性子の計測原理

    熱中性子の計測原理

  • ■図3 熱中性子数と全水量の関係式

    熱中性子数と全水量の関係式

品質管理に用いる単位水量(生コンクリート1m3に含まれる水分量)は、
求めた水分量から骨材吸水量を補正して算出します。

●アクアモニタの特長

アクアモニタの特長は、以下の通りです。

  • 迅速
    従来の測定方法(例えば電子レンジ法では、コンクリートをモルタルに分離する作業+水量測定=約10分)から大幅に測定時間が短縮され、約50秒という"秒単位"での測定が可能です。
  • 簡便
    熟練を要する「コンクリートからモルタルを分離する作業」をなくし、誰でも測定可能にすることで、測定作業を軽減できます。
  • 正確
    単位水量の測定誤差は、従来の測定方法と同等以上の±5kg/m3未満の精度を実現しました。

●今後の展開

今回開発した中性子線源を利用した水量測定技術は、目視することができない鋼管被覆されたコンクリート柱(CFT)のコンクリート充填管理、また、屋上緑化等の土壌水分管理などに応用することも可能です。

東亜建設工業では、本年度末を目標に、今回開発したアクアモニタの装置の製品化を目指しています。(製造・販売は、株式会社エム・ジー・エスを予定)

また、コンクリート打設現場において、作業の簡便性、測定の迅速性に優れる生コンクリート中の水分量測定装置として、関係機関などにも積極的に提案していく考えです。