「シーハンター・システム」を開発・実用化
〜大陸棚調査向けの高精度位置誘導・管理にも対応〜

2003年11月20日

  • ◆沿岸、近海、外洋を問わず、「いつでも、どこでも」高精度に海上での位置誘導・管理を実現
  • ◆衛星(インマルサット)より補正情報を取得することで、GPS基準局不要
  • ◆工事情報や海図情報と組み合わせることにより、安全管理を実現
  • ◆船舶航行管理システムとの融合により、効率的なトータル管理を実現

東亜建設工業はこのほど、出資会社である測位衛星技術株式会社(社長:鳥本 秀幸、本社:東京都新宿区)及び衛星補正情報技術を有するナブコム社(NAVCOM社:アメリカ)と共同で、ナブコム社が運用するネットワーク型高精度DGPS測位システム「StarFireシステム」(全世界をカバーする高精度のDGPS)を日本国内の沿岸域で利用するための精度検証と改良を終え、「シーハンター・システム」として完成させ、国内で初めて実工事に適用し、実用化しました。

人工海底山脈造成(長崎県)のためのブロック投入イメージ
人工海底山脈造成(長崎県)のためのブロック投入イメージ

適用した工事は、長崎県から受注した人工海底山脈造成工事。この工事は、湧昇流を発生させるために、水深85mの海底にブロックを設置して人工的に海底山脈を造り、栄養塩が豊富な深層水を巻き上げて優良な漁場形成を進めるものです。

海洋土木工事の現場では、作業用船舶などの位置を正確に把握して誘導できなければ、要求される誤差範囲内での施工は困難になります。本システムは、四方を海に囲まれ多くの島々を有する日本において、沿岸、近海、外洋を問わず全国どこでも、位置誘導・管理の精度を向上させる為のGPS基準局を設置することなく、海上での位置を精度誤差15cm以内という高精度で誘導・管理することを実現したもので、今後本格化する大陸棚調査や日本近海のプロジェクト(ロシア・中国)などでの活用も可能となります。

●システム開発の背景

近年、海洋土木工事は、沖合い化・大水深化の傾向が顕著で、従来の光学的な方法(トランシットやレベルなどで実際にターゲットを視認することで測量すること)による作業船などの位置誘導・管理は、ほとんど不可能に近い状況になりつつあります。こうした状況下では、「施工支援システム」による作業船などの位置の誘導・管理がもはや不可欠であるといっても過言ではありません。

これまでも当社では、海洋土木の施工現場にいち早くGPSを採用し、これを利用した各種「施工支援システム」を構築して様々な場面で活用してきました。しかし、例えば精度誤差10cm以内の高精度の位置誘導・管理が可能となるRTK−GPSを活用する際には、補正情報を得るためにGPS基準局の設置・運用が必要となることに加え、その基準局からの有効範囲(基準局から10km程度の範囲)の制約により、場所によっては、やむを得ずRTK−GPSより精度の落ちるビーコン(海上保安庁提供)を受信する従来型のDGPS(基準局からの有効範囲は約200km程度)を利用するケースがありました。

今回実用化した「シーハンター・システム」を利用することにより、こうした課題点を克服する「次世代型施工支援システム」の構築・運用が可能となりました。

●シーハンター・システムの特長

シーハンター・システムの特長は、以下の通りです。

全世界で誘導精度15cmを実現、しかもGPS基準局が不要

米国ナブコム社が運用するネットワーク型高精度DGPS測位システム「StarFireシステム」を国内で初めて採用しました。

このシステムは、従来型のGPSのような基準局からの有効範囲内という制約を受けずに、ワールド・ワイドで誘導精度15cm以内の高精度測位が可能であるほか、高精度測位に必要となる補正情報は衛星(インマルサット)から直接受信するため、特定のGPS基準局の設置が不要です。

全世界をカバーする「StarFireシステム」のネットワーク
全世界をカバーする「StarFireシステム」のネットワーク

パソコンを使ったインターフェースにより様々な場面に適用可能

パソコンとStarFireシステム、GPSコンパスなど、様々な機器とソフトウェアを組み合わせることで、グラブ浚渫船、リクレーマー船や起重機船、さらには土運船などといった各種作業用船舶の「施工支援システム」に対して、これまでのような制約を受けることなく、沿岸・近海・外洋を問わず適用が可能です。

既に長崎県より受注した人工海底山脈造成工事の施工支援システムや各種測量工事等で実用中です。

  • 人工海底山脈造成工事の施工支援システム人工海底山脈造成工事の施工支援システム
    人工海底山脈造成工事の施工支援システム

遠隔地でも作業状況を把握することが可能

データ通信端末を付加することで、遠隔地にいても対象船舶の作業状況をほぼリアルタイムに監視することができます。

データ通信端末は、沿岸ではNTTドコモのDopa・FOMA、近海では衛星パケット通信、外洋ではインマルサットのオーブコムを使用することで、いずれも対応可能です。

遠隔地で船舶の位置が把握可能な船舶航行管理システム(伊勢湾で運用中)
遠隔地で船舶の位置が把握可能な船舶航行管理システム(伊勢湾で運用中)

●今後の展開

シーハンター・システムを活用することで、今後も沖合い、さらには外洋へと展開していく海洋土木工事の施工に威力を発揮する次世代型施工支援システムの構築・運用が可能となります。施工支援に活用できるという特長とともに、安全管理にも応用できる特長も活かして、施工の高精度化・効率化、さらにはトータルコストの低減にもつながる有効な手法として、当社は今後、各方面に本システムを提案してまいります。


測位衛星技術株式会社(英文社名「GNSS Technologies Inc.」)

衛星測位関連の根幹技術開発環境を日本国内に移植し、日本発の最先端技術を生み出してこの分野で世界のトップを目指すことなどを目的に、2002年8月8日に資本金7億100万円で設立された会社です。出資者は、DXアンテナ株式会社、船井電機株式会社、株式会社日立製作所、株式会社日立産機システム、日立通信システム株式会社、東亜建設工業株式会社、株式会社ワイドリサーチ、柴崎亮介です。