2003年06月05日
世界で初めてのライザー管のUpending(アペンディング)を成功させました。
東亜建設工業は、2003年5月19日から22日にかけて相模湾平塚沖約25km、水深約1,000mの海域(相模湾三浦海丘付近)に、海洋深層水を活用した海洋肥沃化装置「拓海」(たくみ)を設置しました。
「拓海」は、海洋深層水を汲み上げ、表層水と混合して密度調整を行ない、その豊富な栄養素(窒素、リン等)を有光層(太陽光の届く範囲)に放出・滞留させ、光合成により植物プランクトンを育成することにより、魚を呼び集めて新たな漁場を作るための洋上型海洋深層水汲み上げ装置です。現在まで、このような試みの成功例は世界的に見てもありません。
今回当社が担当した設置工事は、スパー型没水方式の浮体とその下部に吊り下げた海洋深層水汲み上げ用のライザー管(内径1,000mm)を、ワイヤー・チェーン及びシンカーにより、水深約1,000mの海底に1点係留するものです。
主な使用船舶機械は、定点保持装置付き作業台船「開洋」1隻、曳船3隻、警戒船4隻、交通船などです。
設置手順の概略は、以下の通りです。
※(2)、(3)は、同時に並行作業で行ないました。
海洋肥沃化装置「拓海」とライザー管の曳航
設置工事には4日間を要しましたが、静穏な海象が得られにくい相模湾湾央部において気象・海象を的確に判断し、水深1,000mにおける係留系の設置ならびに世界で初めてである長さ175mのライザー管を一時に立ち上げるUpending(アペンディング)を成功させました。
この工事では、当社が長年にわたり培ってきた海洋土木技術がいかんなく発揮されています。
今回設置した「拓海」により、水産庁の外郭団体・社団法人マリノフォーラム21は、今後2年間の実海域実験による評価を行ないます。「拓海」の運転は無人とし、陸上より無線による監視及び補給を行なう計画です。
実験海域は、相模湾の反時計回り還流の中心付近であり、汲み上げた栄養塩が高濃度のまま滞留し、肥沃化効果の大きいことが期待されます。
※海洋肥沃化装置「拓海」について
海洋肥沃化装置とは、海洋深層水を汲み上げて、表層水と混合して密度調整を行ない、その豊富な栄養素(窒素、リン等)を有光層(太陽光の届く範囲)に放出・滞留させ、光合成により植物プランクトンを育成することにより、魚を呼び集めて新たな漁場を作るための洋上型海洋深層水汲み上げ装置です。