2002年10月24日
■このニュースのポイント■
重要な港湾施設の一つとして、護岸があります。護岸には、繰り返して押し寄せる波による洗掘(せんくつ)作用から岸辺を護る機能があり、石積やコンクリート、鋼矢板などでつくられ、直立・急傾斜型、緩傾斜型などのタイプがあります。
高度経済成長期、わが国の港湾施設や都市河川などでは、機能性や安全性を最優先してコンクリートや鋼矢板による直立・急傾斜護岸が数多くつくられてきました。こうした鋼矢板護岸の多くは耐用年数を超え、劣化が進行しており、管理者にとっては気がかりにもなっています。
東亜建設工業は、「安全」「リサイクル」「環境」をキーワードに、護岸の「今」を診断し、「未来」の護岸を創造する「護岸診断再生システム」を開発しました。このシステムを利用して護岸診断サービスを行ない、適切な維持管理方法や、護岸リニューアルの新しい発想として、東亜型「生物共生護岸」を提案します。
東亜建設工業は、当社が保有する、港湾護岸の診断技術、設計・補修技術などをシステム化し、「護岸診断再生システム」を構築しました。
このシステムにより、護岸の診断および再生モデルの提案を企画段階から実施工、メンテナンス、リニューアルまで一貫して行なうことができ、顧客のニーズに合わせたソリューションを提供することができます。
当面は国内の重要港湾内にある鋼矢板式の護岸を対象にし、先ずは東京湾内の護岸の再生を管理者に働きかける計画です。
東亜型の生物共生護岸(傾斜タイプ)
現在、日本各地の工業地帯の護岸・岸壁およびその後背地には、安価な労働力の東南アジア依存に端を発した産業の空洞化により、利用されないまま放置されているものも多くあります。これらの護岸は、高度経済成長期に築造されたものが中心で、当時大量調達が可能であった安価な鋼矢板がその材料として使用されており、耐用年数の面から見ても、耐久性は決して十分とはいえません。中には腐食等により劣化・老朽化が進み、護岸としての機能を失いかけているものも多くあります。老朽化や腐食などの原因によって事故が発生する可能性もあり、護岸管理者にとっては気がかりで、より確かな安全が求められています。
また、「新規開発」から「ストック活用」が重視されるというリサイクルの時代への移行に伴い、リニューアル技術は大きく向上し、土木構造物においてもライフサイクルコストによる評価が注目を集めています。
一方、“21世紀は環境の世紀”スローガンのもと、政府では「沿岸域における自然再生事業」を推進しており、自然や環境への意識の高まりとともに、自然や生物とのふれあいの場を創造するニーズも増えています。
こういった背景のもと、護岸の再生を望む顧客のニーズは、維持管理から新たな環境護岸に至るまで多岐に渡り、これら全般に応えるためのシステム構築が求められていました。
こうしたなか、当社はこのたび「護岸診断再生システム」を開発しました。
東亜建設工業が開発した「護岸診断再生システム」は、いわば護岸にとっての「健康診断」であり「人間ドック」です。人間が健康診断や精密検査を受けて、その診断結果によって治療方法を検討するのと同様に、護岸の現状を様々な面から診断し、その結果に基づいて、どのような補修・補強をいつ行なうのが最適であるかを検討し、より安全性の高い護岸への再生案を「護岸診断書」にまとめて提案します。
本システムを用いることによって、護岸の健全度、劣化の進行状況、補修方法や費用などの把握が可能となり、さらに劣化予測に基づいた今後のメンテナンス計画や予算計画立案など、護岸の継続的な安全管理に利用できます。
本システムの主な特長は、次のとおりです。
本システムの適用にあたって東亜建設工業では、より安全性の高い護岸への補修はもちろんのこと、失われた自然環境の再生を考慮した新しい思想の護岸リニューアルとして、東亜型「生物共生護岸」を提案します。
生物共生護岸は、多様な生物の生息を促し、また水辺やそこに生息する生物とのふれあいにより、心に和みを与えてくれます。
東亜型「生物共生護岸」は、周辺環境との調和を図るとともに、護岸の安定性の向上や、腐食・劣化の進行防止などにも効果があります。
東亜型「生物共生護岸」の主な特長は、次のとおりです。
当社は今後、「護岸の診断サービス」を通して、護岸の安全性(機能)の充実を図るとともに、水性動植物とのふれあい(憩い)の場の提供が可能となる、豊かな沿岸環境を創出する東亜型「生物共生護岸」を、老朽化した護岸を管理されている国や地方自治体をはじめとした皆様に積極的に提案していきます。