簡易で経済的な沈埋函の方向修正方法を開発

2002年06月13日

  • ◆「クサビ」を利用して方向修正を容易に
  • ◆沈埋函の接合工期を短縮可能に

■このニュースのポイント■

海や川で隔てられた場所を結ぶには、橋を架けたりトンネルで結んだりする方法があります。

沈埋(ちんまい)トンネルとは、河川底や海底にトレンチ(溝)を掘って、そこにあらかじめコンクリートや鋼板でつくった函体(沈埋函)のブロックをつなげてつくられるトンネルのことをいいます。この工事で一番難しいのは、函体と函体を正確につなげることで、非常に高い精度が求められます。

東亜建設工業ほか2社は、この沈埋函同士をつなぎ合わせるときに発生する微妙な誤差を、「クサビ」を利用して修正する技術を開発しました。

東亜建設工業、東洋建設株式会社、新日本製鐵株式会社の3社は、沈埋トンネル工事における沈埋函据付け作業時の方向修正方法として、簡易で経済的な方法を新しく開発しました。

  • クサビ方向修正による施工状況
    クサビ方向修正による施工状況
    (クリックすると拡大します。)
  • 従来の方法とクサビ方向修正
    従来の方法とクサビ方向修正
    (クリックすると拡大します。)

●背景

海底に沈設する沈埋函は、陸上部よりポンツーンにて順次位置決めをしながら据付けを行いますが、沈埋函の製作・据付け時および測量精度に誤差が生じるため、少しずつ法線がずれてきます。このため、据付け途中で沈埋函の方向修正を行い、沈埋函の設置位置をトンネル法線上に修正し、所定のルートとなるように施工しています。

従来の方法は、沈設したのち沈埋函に水圧接合力がかかった状態で方向修正を行うため、400tonもの大きなジャッキを数台設置して水圧に反発する方法で方向修正を行っていました。また、沈埋函沈設後にバルクヘッドの撤去、ジャッキの取付けを行うことから方向修正までに長い時間を要し、埋め戻しができず沈埋函は長期間不安定な状態にありました。

●工法の概要と特長

今回開発しました「クサビ」を利用した簡易な方向修正方法は、沈埋函製作時に沈埋函の端面隔壁部に「クサビ」を設置し、沈設後、この「クサビ」を上下させることにより沈埋函の左右のクリアランス量を調整して方向修正を行うものです。方向修正の作業時には沈埋函接合部に注水して水圧接合を開放するため、油圧ジャッキで「クサビ」を動かす力は小さなもので済みます。

この方法の特長としては、下記の2点が上げられます。

  • (1)大きなジャッキを使用しないため、短期間かつ大幅なコストダウンが図れます。
  • (2)短期間に方向修正ができるため、埋め戻し作業が連続して施工でき、沈埋函の不安定な状態を短くすることができます。

●今後の展開

今後、各地で計画されている沈埋トンネル工事での採用に向け、技術提案を進めてまいります。