自律航行型 測深システム「自動ベルーガ」を
ダム湖全域の全面測量調査に本格的導入

2001年11月07日

  • ◆ITを駆使した測量システムで、高精度かつ迅速に測量実施
  • ◆小型で分割運搬も容易
  • ◆ダム湖測量調査の効率化と省力化を実現
  • ◆東北地方にあるダム湖全域の全面測量に採用

東亜建設工業は、自社開発したリアルタイム・高密度水中施工管理システム「ベルーガ・システム」を応用し、山間部の広範なダム湖底の調査を行なう「ダム湖堆積状況診断システム」を開発しています。その一環として、自律航行が可能な「自動ベルーガ」システムを開発し、実証実験を進めていました。

このたび、本システムを本年4月に岩手県の四十四田ダムで実施されたダム湖全域の全面測量に適用し、約35万m2・平均水深約10.7mのダム湖全域を、高精度かつ迅速に測量しました。

本システムにより、ダム湖・湖沼などの汀線を含む全域詳細測量を高精度かつ迅速に行なうことが可能になり、従来人力測量に頼っていた面的な測量に要する労力の大幅な削減が期待できます。

  • 調査状況

    調査状況

  • 解析データ(鳥瞰図)

    解析データ(鳥瞰図)

●背景

従来のダム湖の測量調査は、管理する測線を設け、その測線に沿って、水中部は音響測深器もしくは重錘で計測し、陸上部は水準測量で計測しています。この測量方法では、ダム湖全域をカバーするほど密な測線では測らないため、測線に沿って帯状に未測深幅が出来てしまいます。この未測深幅が狭いほど測量の精度は高くなる反面、手間と費用もかかっていました。

また当社は3年ほど前より、山間部の広範なダム湖底の調査を行なう「ダム湖堆積状況診断システム」を開発し実績を積み重ねてきていますが、狭隘なダム湖等での測量は、測量船の運搬が困難な場所もあり、更に湖底の地形が複雑なため、測量の際に通常の測量船では喫水の問題から座礁の危険性もありました。

そこで当社は、これらの問題を解決すべく、自律航行型測深システム「自動ベルーガ」の開発に着手しました。

●本システムの特長と概要

本システムの特長と概要は、以下のようになります。

  • (1)船体は、組立式小型双胴船(全長4,500mm×全幅2,300mm×全高400mm、重量約80kg)。
    分割運搬が可能で、通常の測量船では運搬困難な場所にも持ち込むことができます。測量機器等も全て蝶ネジやバンドなどにより固定する構造になっており、工具等を用いることなく現地で組立が可能です。
  • (2)位置管理には、RTK-GPS/GLONASSを採用し、水中部の計測はナローマルチビーム測深機を、陸上部の計測はレーザーミラースキャナを採用。
    これにより、水中部と陸上部を同時にかつ連続的に測量し合成・補完することが可能になり、その結果、汀線を含むダム湖全域を高精度かつ迅速に測量することが可能になりました。
測量イメージ図

測量イメージ図

●今後の展開

今後は、地形が狭隘で水深が浅く、通常の測量船では座礁の危険性もあり測量が困難になると考えられる海面域への導入も検討しています。

また本システムは、無人での調査が可能であることから、今後は立ち入りが制限される危険区域の状況確認等への利用も考えています。