海上施工における鋼管杭の打込み誤差に柔軟に対応できるプレキャスト桟橋上部工と鋼管杭の鉄骨差込み接合構造

プレキャスト桟橋施工合理化工法

Rationalized Construction of the Precast Concrete Pier using Beam-to-Column Insertion Joint with Steel Frame

概要

海上コンクリート施工では、特殊技能を有する作業員が必要で多大な労力を要すること、工事進捗が海象条件等に大きく左右されることから、海上作業の省力化と安全性の向上が課題となっています。また、近年では、i-Construction に対する取組みの一環として、港湾構造物のプレキャスト化が推進されています。桟橋上部工のような複合構造物においてプレキャスト化を推進する上では、部材間の接合(特に、鋼管杭と上部工の接合)が重要となります。しかし、海上での鋼管杭の打込みでは高い精度を要求することが難しいため、桟橋上部工の築造においては、大掛かりな支保工を構築して現場打ちコンクリートにより施工するのが一般的でした。そこで、海上桟橋の上部工を構成する杭頭部、梁、床版の部材をプレキャスト化し、鋼管杭と杭頭ブロックの相対的な位置のずれに対して柔軟な設計ができる“鉄骨差込み接合”を用いた「プレキャスト桟橋上部工の施工合理化工法」を開発しました。
本工法は、海上桟橋の上部工築造において、コンクリート工の大半の作業を海上ではなく陸上で行うものです。この点においては、従来のプレキャスト施工と大きな相違はありませんが、港湾の海上桟橋では類のない“鉄骨差込み接合”の採用により鋼管杭の施工誤差を吸収できるようにしたことで、海上作業の施工性や安全性の向上を可能とした工法です。

※鉄骨差込み接合とは、海上に打ち込んだ鋼管杭の内部に、杭頭ブロックから突出させた差込み鋼材を挿入した後に、中詰めコンクリートを打設することで杭頭ブロックと鋼管杭を一体化させる接合方法です。

※差込み鋼材と中詰めコンクリートからなる差込み部材を介して“上部工と鋼管杭”の荷重伝達を行います。

図1 本工法の施工手順 ※図中の番号は施工順序を表しています。

図1 本工法の施工手順 
※図中の番号は施工順序を表しています。

図2 本工法における杭頭接合構造

図2 本工法における杭頭接合構造

特徴

杭の平面・高さ位置の誤差吸収に対して柔軟な設計が可能

・鉄骨差込み接合は、差込み鋼材と杭内側の離隔により杭打ちの平面位置の誤差を吸収できるため、離隔の設定値を調整することで施工条件に応じた柔軟な設計が可能です。

・杭頭ブロックの高さ調整は、杭天端の測量結果に応じて陸上にて設置する高さ調整プレートにより行うことで、海上作業は測量のみとなり、海上作業を大幅に省略できます。

大組ユニット化による工程短縮

・杭頭ブロックは、陸上にて梁ブロックを連結させた大組ユニットを施工条件に合わせた自由な形状で構築することで、海上作業を削減し工程短縮を図ることもできます。

図3 杭の平面的な打込み誤差の吸収の概念図

図3 杭の平面的な打込み誤差の吸収の概念図

図4 大組ユニットの例

図4 大組ユニットの例

関連特許

特開2021-059962、特開2021-130967