〜臨海部の現場で発生する細粒分を多く含む土など多様な土に幅広く対応〜
AIを活用した土の粒度分布判定システム「ASYST」

2024年01月30日

東亜建設工業株式会社(東京都新宿区:社長 早川毅)は、株式会社インキュビット(東京都渋谷区:代表 北村尚紀)をAI開発パートナーとして、土の粒度分布を短時間で判定するシステム「ASYST: Artificial intelligence SYstem for effective utilization of Soil by Toa」を開発しました。
建設現場では、施工に伴って発生する土や材料としての受入れ土など、様々な用途や施工状況に応じて粒度分布の評価を求められる場面が多く生じます。このようなニーズに対し、対象となる土の粒径加積曲線を容易に、かつ迅速に得られる点が本技術の最大の特長です。

開発の背景

建設発生土の有効活用判定や受入れ土の利用計画など、特に土工事や地盤改良工事においては、土砂の粒度情報に基づいて施工の技術的判断を迅速かつ的確に下さなくてはならない場面が多く発生します。しかしながら、この土の粒度情報を知るうえで基礎データとなる粒径加積曲線を得るための粒度試験は、習熟した技術者が1日〜数日をかけて実施しているため、その結果を施工管理に反映させることに時間的課題が残ります。そこで、土の粒度試験をその都度実施することなく粒度情報を把握し、施工管理に直ちに反映させることを目的に、現場レベルの簡単な操作のみで実用上十分な精度を有する粒径加積曲線をAIによって推定することができるシステム「ASYST」を開発しました。

図-1 粒度分布判定システム「ASYST」から得られる結果の例

図-1 粒度分布判定システム「ASYST」から得られる結果の例

ASYSTの特長

ASYSTによる土の粒度判定手順は、まず対象土を現場にて採取し、所定量を専用容器に封入した試料を作製します。その後、その試料を専用の撮影BOX内にセットし、内蔵のカメラにて複数枚の画像撮影を行います。一連の画像データは、インターネット経由でオンラインサーバーに転送され、新規開発したAI粒度分布判定システムにより対象土の粒径加積曲線の推定結果を直ちに得ることができます(図-2)。本システムでは、対象土の採取・調整から粒径加積曲線の推定までを1時間以内で実施することが可能となります。
以下に、ASYSTの特長を示します。

  1. 砂質土〜粘性土(粒径4.75mm以下)の粒度推定にも対応
    浚渫・埋立事業や地盤改良事業など、臨海部の軟弱地盤を対象とする施工現場で出現頻度が高い、粒径4.75mm以下の砂質土〜粘性土の粒度推定にも対応できるような仕様としています。
  2. 細粒分の団粒化を防ぎ、AI判定の粒度推定精度を向上
    土砂を自然状態もしくは乾燥状態で撮影して粒度推定を行う場合には、細粒分(シルト分、粘土分)が団粒化して実際よりも大きな粒径材料として誤認識される、という潜在的な問題を有しています。そこで、本システムでは加水・解泥した(水で解きほぐした)土砂の画像から粒径加積曲線を推定する仕様とし、細粒分の団粒化を防止することで推定精度の向上を図っています。
  3. 短時間での粒度推定を実現
    ASYSTの使用においては、対象となる土の採取・調整からAIによる粒径加積曲線の推定までを1時間以内で実施することができます。そのため、迅速な判断が要求される場面の施工管理に活用することができます。
図-2 粒度分布判定システム「ASYST」の概要

図-2 粒度分布判定システム「ASYST」の概要

今後の展開

今後、土を取り扱う多くの現場で活用しながらAIの追加学習を進め、多種多様な粒度特性の土砂に対応できるようASYSTの適用性を高めてまいります。これにより、下記のような多くの活用シーンを生み出すことができると考えています。

  • ダム浚渫土を対象とした分級前後の概略的な粒度把握
  • 粒度特性に基づく液状化の概略判定 など

本件に関するお問い合わせ先

東亜建設工業株式会社
経営企画本部 経営企画部 広報室
TEL:03-6757-3821