新生東亜の技術の基礎を担うべく「技術研究開発センター」を拡充

2017年07月19日

東亜建設工業株式会社(東京都新宿区:社長 秋山優樹)は、研究開発施設の再整備として、発祥の地である横浜市鶴見区安善町の技術研究開発センターの施設・設備を強化・拡充しました。

再整備の背景

近年、海洋開発など新しいニーズが増加し、一方では、災害に強いまちづくりやインフラの更新・長寿命化に関する技術開発も社会から強く求められています。
当社においては、長年利用した設備を用い、現場と一体となって研究開発を行うことで、様々なニーズに対応しておりました。
この様な中、さらなる技術レベルのステップアップを目指し、多様化するニーズに対応した技術開発を推進するため、研究開発施設・設備の再整備を行いました。
このたび再整備した施設・設備を有効に活用することにより、信頼性の高いデータを取得し、より効率的で確実な社会貢献に資する技術の開発に取り組んでまいります。

再整備の概要

技術研究開発センターの研究開発施設・設備は、新しい研究棟とともに2016年4月に完成しました。研究棟には、オフィス業務や研究開発活動により消費されるエネルギーを総合的に管理するBEMS(Building and Energy Management System)を導入するとともに、当社の技術を紹介するショールームとしての要素を付加し、さらには地域の防災拠点としての機能を持たせました。
以下に、新研究棟の概要および新たに導入した主な施設・設備を紹介します。

【研究棟】
研究棟(写真-1)の規模は、鉄骨構造地上4階建て・延床面積3,645.78m²・最高高さ17.26mです。施設内は、4階まで吹抜ける大空間を持つ実験エリアと各階に執務空間を配置する構成としています。
研究棟の新設にあたり、設計・制御・再生エネルギーの利用の観点から、それぞれ以下の省エネ技術を採用しました。
設計の観点からは、エネルギー消費の基となる空調・照明などによる各種負荷を低減するための技術として、『Low-E複層ガラス』・『タスクアンビエント照明』・『センサーによる照明制御』・『ハイブリッド式水配管レス調湿外気処理機』・『屋上緑化』を取り入れています。
制御の観点からは、建物の省エネ性能を維持するために設備機器の運転を監視する『BEMS』を採用して、運用段階での運転監視・スケジュール管理、省エネ診断を行い、常に建物の省エネ性能を向上させています。
再生エネルギーの利用として、屋上に太陽光発電パネル(49.28kW)を設置し、再生可能エネルギーの生成による地球温暖化対策にも取り組んでいます。
また、BCP対策として非常用発電機を設置し、停電時の照明・コンセント電源のバックアップに備えています。

写真-1 技術研究開発センター研究棟

【施工実験水槽】
施工実験水槽(写真-2)は、掘込み式の大型水槽です。表-1に示すように、幅11.4m、奥行4.0m、深さ5.0mと大規模な水槽であり、水中における施工状況を実大スケールで再現できます。
本施設は、写真-2に示すように1階フロアの水槽上部から実験機材の操作や観察ができることと併せて、地下フロアに設けられた水中観察窓からも実験状況を視認することができます(写真-3)。実際に実験機材を操縦しながらリアルタイムに動作状況を確認することが可能となり、i-Constructionに対応する技術の開発や、海洋開発などの将来に向けた技術の開発にも活用できます。

表-1 施工実験水槽の仕様

鉄筋コンクリート製水槽 幅11.4m×奥行4.0m×深さ5.0m
水中観察窓 幅3.6m×高さ1.2m

写真-2 施工実験水槽

写真-3 水中観察窓から見る水槽内の様子

【大型造波水路】
大型造波水路(写真-4)は、通常の規則波および不規則波に加えて津波段波も発生させられる断面二次元造波水路です。本施設は表-2に示すように、長さ60.0m、幅1.0m、深さ2.0mと、以前に保有していた施設よりも長さ、深さの大型化を図るとともに、造波性能を大幅に向上させました。これにより、縮尺1/20程度の大型実験が可能となりました。
本施設には、波を起こす造波装置に加え、流れを発生させる循環装置と津波段波を発生させる段波装置が装備されています。段波装置は、今回の大型造波水路の整備に合わせて自社開発したものです。この段波装置は、2011年の東北地方太平洋沖地震で発生した津波と同規模の津波を再現することが可能となっています。更にこれらの装置を組み合わせることにより、波、流れ、段波を連携させ、様々な波形による実験が可能となっています。

表-2 大型造波水路の仕様

大型造波水路 長さ60.0m×幅1.0m×深さ2.0m
造波装置 [ 形式 ] ピストン型、反射波吸収制御
[ 発生波 ] 規則波(最大波高60cm)、不規則波、孤立波、任意波
循環装置 [ 形式 ] 渦巻きポンプ型
[ 発生流 ] 順流、逆流、往復流(最大流量10m³/min)
段波装置 [ 形式 ] 昇降ゲート制御型
[ 発生波・発生流 ] 津波段波、ダムブレーク

写真-4 大型造波水路

【大型実験用土槽】
大型実験用土槽(写真-5)は、土槽内にさまざまな条件の地盤を再現して実験が行える施設です。土槽上部に設置された載荷装置(写真-6)により、鉛直圧にして盛土高さ約4mに相当する最大80kPaを載荷することができます(表-3)。このような載荷能力をもつ土槽としては、国内最大級の大きさです。また、土槽前面は透明アクリル板であるため、実験時に地盤の挙動を視認することができます。
本土槽では、載荷圧力を制御することにより、原地盤における拘束圧などの条件を現地に近い形で再現できます。これにより、実大から数分の1スケールで、セメント系固化処理技術、液状化対策技術および埋立処分場における地盤減容化技術などの各技術開発に向けた模型実験を行うことができます。更には、杭の支持力評価や地盤調査のための施工機材・調査機材の性能確認実験を行うことも可能です。

表-3 大型実験用土槽の仕様

土槽 幅3.0m×奥行2.3m×高さ4.0m [2.0m×2層]
材質・構造 1面アクリル板+3面鋼製板・止水構造
載荷装置 油圧ジャッキ+鋼製載荷板(最大上載圧:80kPa)

写真-5 大型実験用土槽

写真-6 載荷装置

【大型載荷試験装置】
大型載荷試験装置(写真-7)は実大規模の柱、スラブ、梁、柱−梁接合部などの載荷試験ができる施設です。鉛直ジャッキに水平ジャッキと反力架台(写真-8)を併用することにより、鉛直と水平の二軸載荷試験も可能です。表-4に示すように、鉛直載荷能力は圧縮3,000kN、引張1,500kN、水平載荷能力は圧縮・引張ともに1,500kNです。
本載荷装置で実験できる供試体の最大寸法は、幅4.5m、高さ3.5mであり、実大サイズの載荷試験も実施可能となっています。

表-4 大型載荷試験装置の仕様

載荷フレーム 幅5.5m×奥行2.5m×高さ8.3m
鉛直ジャッキ 圧縮:3,000kN、引張:1,500kN、ストローク±250mm
水平ジャッキ 圧縮:1,500kN、引張:1,500kN、ストローク±150mm
供試体最大寸法 幅4.5m×高さ3.5m

写真-7 大型載荷試験装置

写真-8 水平ジャッキと反力架台

【過酷環境再現室】
過酷環境再現室(写真-9)は、-30〜+80℃、10〜95%R.H.の範囲で、あらゆる温度・湿度の条件、すなわち、極低温から高温環境および、超多湿から極乾燥環境を再現することができる装置です。表-5に示すように、室内寸法が幅3.5m、奥行3.3m、高さ2.1mであるため、さまざまな過酷環境に管理された室内にて、各種材料の試験練りや試験体の作製、更にはその施工性の確認を行うことができます。また、作製された供試体を過酷環境下で長期間暴露養生することにより、それらの品質についても試験することができます。

表-5 過酷環境再現室の仕様

室内寸法 幅3.5m×奥行3.3m×高さ2.1m
設定可能温度 -30〜+80℃
設定可能湿度 10〜95%R.H.

写真-9 過酷環境再現室

本件に関するお問い合わせ先

東亜建設工業株式会社 経営企画部広報室 清水
TEL:03‐6757‐3821 / FAX:03‐6757‐3830