2013年01月31日
東亜建設工業株式会社(社長:松尾正臣)は、浚渫土砂から砂分、シルト分を分離(分級)し、建設材料としてリサイクルする「ソイルセパレータ・マルチ工法」を、宮城県気仙沼市内で津波堆積物の分級の実証実験に初採用しました。
「ソイルセパレータ・マルチ工法」とは、当社が浚渫土砂の減容化およびリサイクルを目的に開発した工法です。砂質系の浚渫土砂に加水して、振動ふるい(スクリーン部)と遠心分離装置(セパレータ部)を段階的に組み合わせて処理することで、礫分、砂分、シルト分を主体とした、粘土分を殆ど含まない良質な土砂にそれぞれ分級することができます。分級処理後の粘土分を含んだ泥水は凝集沈殿および脱水・減容化して最終処分します。この工法は、平成23年度に国土交通省発注の大分県中津港航路浚渫工事内で採用され、浚渫土砂 約1,200m³を処理した実績があります。
東日本大震災による津波で大量に発生した土砂は、ごみやがれきが混入した津波堆積物と呼ばれています。
東北3県(岩手、宮城、福島)で約1,039万トンと推計される津波堆積物の処理・処分済みの割合は、平成24年12月末現在で約16%に留まっており、復旧・復興の妨げの要因のひとつとなっています。(環境省廃棄物・リサイクル対策部公表)
一般的に、津波堆積物は、加水などをおこなわずに直接50o程度のふるい目の回転式ふるいなどを用いて処理されますが、処分後の土砂にはごみ、がれきや粘土分が混入しており、また一部には有害物質が含まれる可能性もあります。有害物質が含まれる場合、その土砂は廃棄物として取り扱われることになりますが、現状では、津波堆積物が廃棄物か否かの判断基準が明確ではないことから、廃棄物が混入する低品質の土砂の利用の可否、利用される場所の選定、その後の管理も含めて、処分方法が確立されていません。
そこで、当社は「ソイルセパレータ・マルチ工法」を応用し、津波堆積土砂から数o程度の細かいがれき、ごみを分別・除去し、さらに土砂部分を分級して粘土分を極力除去することで廃棄物を取り除くリサイクル技術を確立しました。
「ソイルセパレータ・マルチ工法」による津波堆積物の処理では、加水によって木片やビニール片、プラスチック片などが洗浄及び比重分別されます。今回は、従来の工程に、細かいがれきやごみを分別・回収する工程を新たに加え、ほぼ完全にそれらを除去することが可能となりました。分級処理後の粘土分を含んだ泥水も、凝集沈殿および脱水処理を行い、その安全性が確認されている場合、セメント処理などで盛土用などの復興資材として有効利用できます。脱水処理は必要最低限の簡易脱水としているため、従来より減容化率は低い反面、復興資材の量的確保に貢献することができます。
また、従来の回転式ふるいなどでの処理を行う方法と比較して、同等または低コストで、高品質な復興資材を供給できます。
「ソイルセパレータ・マルチ工法」は、国土交通省の「平成23年度補正予算建設技術研究開発助成制度(震災対応型技術開発公募)」の内、がれき・土砂処理対策の研究課題に採択され、平成24年12月に最終報告が終了しました。当該研究では、産官学から構成される第三者委員会により、品質、コストともに事業化が可能な技術であると評価されました。
当社は今後も引き続き、「ソイルセパレータ・マルチ工法」を用いた津波堆積土砂リサイクル技術を積極的に提案し、被災地の早期復旧、復興に貢献していきます。
以 上