「油圧ハンマ打撃音低減装置」を開発

2012年03月28日

東亜建設工業(株)(東京都新宿区、社長:松尾正臣)は、杭打設時の打撃音を低減する「油圧ハンマ打撃音低減装置」を開発し、鋼管杭打込工事で実用化しました。

「油圧ハンマ打撃音低減装置」開発の背景

鋼管などの杭の打設は、コンクリート構造物や鋼構造物を構築する際に、地盤の支持力を確保するための基礎構造として広く用いられています。

油圧ハンマによる打設は、打設力が強く、最も杭の支持力を客観的に評価できる、信頼性の高い施工法ですが、重錘を落下させて杭を地中に打ち込むため、ハンマと杭の衝突により、大きな打撃音が発生します。

このため、施工時における工事現場周辺への騒音影響が課題となっています。

これまでにも、防音カバーなどの低減装置が開発されていますが、その多くは油圧ハンマや杭全体を覆うものでした。低減装置によって杭全体が覆われると、視認性が落ち、法線誘導(位置決め、傾き)や高さ管理に支障が生じ、杭の打込工事の期間が長くなるなど、施工性に課題を残していました。

そこで当社は、施工性を確保しつつ騒音を低減することで、周辺環境への負担を軽減する、「油圧ハンマ打撃音低減装置」を開発しました。

「油圧ハンマ打撃音低減装置」の概要

開発した低減装置は、打撃音がもっとも大きい油圧ハンマ下部を、植木鉢状に加工した鋼板で囲うものです。

遮音原理は、放射された打撃音を低減装置内で反射させ外部への透過を抑制し、 さらに装置内の制振材料と多孔質材料からなる吸音構造により、幅広い周波数帯の騒音を音エネルギーから熱エネルギーに変換し、打撃音を低減します。

模型実験での結果を基に、打撃音がもっとも大きい箇所を重点的にカバーすることによって、コンパクトで施工性を損なわない構造を実現しました。

横浜港南本牧地区の工事では、油圧ハンマの音源から15m離れた計測地点で、125Hz〜4000Hzの幅広い各周波数帯において最大で9dB(デシベル)(平均6dB) の低減を確認しました。

イメージ図

「油圧ハンマ打撃音低減装置」の特長

  • (1)幅広い周波数帯において騒音を低減できる。
    (南本牧地区および直江津の実績から、音源から15m離れた計測地点で各周波数帯における騒音を
    平均6dB低減したことを確認)

  • (2)設置箇所を油圧ハンマ、及び杭の一部に限定することにより、施工精度を確保することができる。

  • (3)コンパクトな構造であるため、取り付けや取り外しが容易である。

  • (4)従来の大型防音カバーに比べ、軽量で安価である。

イメージ図

現地適用事例

  1. 工事名
    :横浜港南本牧地区岸壁(-16m)(耐震)鋼管杭打込等工事(その2)
    工事場所
    :神奈川県横浜市
    発注者
    :国土交通省関東地方整備局

現地実験事例

  1. 工事名
    :直江津LNG受入基地建設工事 桟橋および取放水管建設工事
    工事場所
    :新潟県上越市
  2. 発注者
    :国際石油開発帝石株式会社

イメージ図
低減装置の有無による油圧ハンマ騒音の周波数特性
(南本牧地区の工事での計測結果)

《参考までに》6dBの低減はどれほどの違いなのか

例1:下の図の例にあるように、同じ規格の建設機械4台を同じ音圧レベルで使用したときの全体の音圧レベルが76 dBであったとします。この場合、この騒音レベルを6dB低減させるためには、建設機械をもとの1/4である1台に減らす必要があります。

イメージ図
図 音圧レベルの表示に用いるデシベルと倍数
出典:(社)日本環境測定分析協会:騒音レベル測定マニュアル(平成15年)

例2:国土交通省の「低騒音型・低振動型建設機械の指定」によれば、騒音基準値から6dB減じた値まで騒音を低減できた低騒音型建設機械は「超低騒音型建設機械」と表記できるとされています。6dBの差は一般に人の耳に、はっきり違いが分かるほどの変化と考えられます。
(注)油圧ハンマは低騒音型・低振動型建設機械ではありません。

イメージ図
打撃音低減装置(直江津)

イメージ図
低減装置の打設実験状況(直江津)

本件に関するお問い合わせ先

東亜建設工業株式会社 広報室 小川 信行、渋谷 敏行
TEL 03-6757-3821 / FAX 03-6757-3830