深層混合処理船「黄鶴(こうかく)」を建造
〜環境配慮型の次世代作業船〜

2010年03月18日

  • ◆作業船ハイブリッドシステムを搭載
  • ◆排出ガス抑制とエネルギー利用の効率化

東亜建設工業株式会社(東京都新宿区:社長 鈴木行雄)は、環境に配慮し、エネルギーを効率的に利用する次世代作業船として、デコム工法専用船である深層混合処理船「黄鶴」を建造しました。

「黄鶴」建造の背景

デコム工法(Deep Cement Continuous Mixing Method)は、 セメント系硬化剤と軟弱土を攪拌混合・固化させ、軟弱地盤を堅固な地盤に改良する工法です。水面下50m以深の海底地盤まで改良ができ、早期に安定した強度が得られるため、大規模な構造物を建設する際の地盤改良工事で多く採用されています。
一般呼称は、CDM工法(Cement Deep Mixing Method)。

当社グループは現在、大型船(5.7m2注1))2隻、中型船(4.6m2級)1隻、そして、 小型船(2.2m2級)2隻のデコム船を保有していますが、一部機体が老朽化していること、さらには、国内港湾施設の大水深化・耐震化が進む今後の市場を睨み、大型デコム船「黄鶴」を建造しました。
建造にあたって、エネルギーの高効率化と自然エネルギーの利用を組み合わせた「作業船ハイブリッドシステム」を開発しました。本船は、このシステムを搭載した環境配慮型の作業船第一号です。

注1) 1回の施工で可能な改良面積

「黄鶴」の特長

  • (1)電動インバータ方式
    ウインチ類を稼働させる電動モーターには、省エネルギー効果をもたらすインバータ方式を採用しています。
    油圧機器をほとんど使用しないため、騒音や油流出を抑制することができます。
  • (2)作業船ハイブリッドシステム
    本船建造にあたって、エネルギーの高効率化と自然エネルギーの利用を組み合わせた「作業船ハイブリッドシステム」を開発しました。
    これにより、従来の作業船に比べ、CO²排出量を削減できる構造となっています。以下、本システムの構成を示します。
  • (3)設備の劣化兆候と異常原因を迅速に把握することが可能。
  • (4)補修時期を事前に予測することで設備事故を防止し、保全コストを削減。
  • 発電設備・統合制御装置
    複数の可搬式ディーゼル発電機を設置することで、発電機にかかる負荷を分散させるとともに、作業内容に応じて最適な台数を効率的に稼動させることができます。
  • 電力回生システム
    作業船本体から、深層混合処理機を下降させる際に、昇降ウインチが回転することによって発生する電気を発電機側に戻す(回生)ことにより電気を再利用することができます。
  • コージェネレーションシステム注2)
    作業船で使用する電気を発電する際に発生する排熱を回収して温水をつくり、船内で使用する温水として有効利用します。

    注2)燃料を用いて発電するとともに、その際に発生する排熱を冷暖房や給湯、蒸気などの用途に有効利用する省エネルギーシステムのこと。

  • 太陽光発電、風力発電
    可搬式ディーゼル発電機による発電に加え、太陽光発電、風力発電を採用し、船内照明等の電力として利用しています。
    また、太陽光発電では、可変式太陽光パネルによる太陽光追尾システムを搭載し、効率的に蓄電することができます。

■「作業船ハイブリッドシステム概念図」

「作業船ハイブリッドシステム概念図」

■「黄鶴」の諸元

船体仕様 処理機
吃水 塔高
(WL)
改良
面積
攪拌
軸数
改良
深さ
処理
能力
処理機
位置
駆動
方法
重量 トルク
m m m m m m2 水面下m m3/hr - - t kg-m
70.0 32.0 4.5 2.65 61.0 5.47 4 52.0 90以上 前方 電動 275 7,500
機関 プラント
全装備機関出力 セメントサイロ ミキサ アジテータ グラウトポンプ
kw t×基 m3×基 m3×基 l/min×基
4,408 300×4 3.0×2 13×1 440×8

今後の展開

国内における地震対策、軟弱地盤対策、海底地盤の遮水性能確保の必要性は、今後ますます高まってくるものと思われます。当社はこれらの様々な地盤改良工事に対し、環境に配慮した深層混合処理船を使って技術提案を行っていく予定です。また、今回開発した「作業船ハイブリッドシステム」の機能をさらに向上させ、地球温暖化の防止に向けて貢献して行きます。

■深層混合処理船「黄鶴」全景

深層混合処理船「黄鶴」全景