潜水士の減圧症を予防する「減圧管理システム」を開発

2009年06月29日

  • ◆潜水深度・潜水時間をリアルタイムかつ正確に把握
  • ◆浮上時の減圧深度および減圧時間の管理を徹底
  • ◆無線LANにより作業情報を集中管理

システム開発の背景

港湾や湖沼における工事では、潜水士による潜水作業を伴うことがあります。水中で行われる潜水作業は、気中での作業に比べて作業効率が落ちるため、様々な要因による潜水事故が発生する可能性があります。特に長時間・大深度の潜水作業による減圧症 注1)は常に予測される危険としてあげられます。
減圧症を防ぐためには、水面に浮上する前に、潜水作業時の深度(=水深)・時間に応じた規定の深度で、体内に溶け込んでいた窒素を排出する減圧時間を設ける必要があります。そのため、潜水士船に同乗している連絡員は、潜水深度や潜水時間などの作業情報を把握し、潜水士と連絡して潜降及び浮上を適正に行わなければなりません。
しかしながら、従来の潜水作業においては、潜水深度については潜水士の自己申告により減圧を実施することもあり、勘違いや誤認識によって減圧症を発症する危険性がありました。
このような背景から、潜水時の作業情報から正確な減圧深度・減圧時間を計算し、連絡員、潜水士双方で認識することで、潜水士の減圧症を予防する「減圧管理システム」を開発しました。

注1)減圧症とは
潜水作業の高気圧環境から、水面に浮上し常圧環境に戻る際に、血液中に溶け込んでいた窒素ガスの気泡が生じ、血管を閉塞して発生する障害のこと。

本システムの特長

  • (1)潜水深度・潜水時間の正確な把握
    潜水服に装備した高性能水位計の深度データと潜水作業時間が、潜水士船に設置したパソコン画面上にリアルタイムで表示されるため、連絡員は、潜水深度・潜水時間を正確に把握できます。
    連絡員と潜水士間の連絡は有線の水中電話で行います。
  • (2)減圧深度・減圧時間を自動計算
    「高気圧作業安全衛生規則」の潜水業務用時間表データがパソコンに入力されているため、潜水作業終了時に、水位計の深度データと潜水作業時間から減圧深度と減圧時間を自動計算し、迅速に確実な減圧が行うことができます。
  • (3)不適切な減圧に警報を発信
    減圧中に規定の深度から離れてしまった場合や、減圧時間が不足している場合には注意を促す警報を鳴らすため、適切な減圧を行うことができます。
  • (4)高い管理基準を適用
    減圧の所要時間の計算を行う際に、通常の安全基準よりも1ランク上の管理基準を適用するため、より高い安全性を確保することができます。
  • (5)無線LANと携帯端末により作業情報を集中管理
    遠隔監視場所(=事務所)において各潜水士船の作業状況を監視する場合には、作業区域内の潜水士船を無線LANで結び、携帯端末を使用して遠隔監視場所のパソコンに送信することで作業状況の集中管理が可能となります。
    また、作業情報は電子データとして保存されるため、作業日報データへの転用など、業務効率化を図ることができます。

今後の展開

今回開発した「減圧管理システム」により、潜水士の作業情報をリアルタイムに把握することができるようになり、さらに、減圧時間を迅速かつ正確に計算することが可能となりました。潜水業務の管理において安全性の確保というニーズに応えるシステムとして、現場での幅広い運用が期待されます。

■「減圧管理システム」フロー図

「減圧管理システム」フロー図