自走式スパイラルドレーン小型打設機を開発
〜低振動・低騒音の液状化対策工法〜

2007年03月30日

  • ◆スパイラルドレーン小型打設機の高い打設性能を実証
  • ◆旧法タンクの他、狭隘な箇所・高さ制限のある箇所における液状化対策に有効
  • バックホウをベースマシンにしたスパイラルドレーン小型打設機バックホウをベースマシンにした
    スパイラルドレーン小型打設機

東亜建設工業(株)は、平成19年1月29日から31日にかけて、当社の千葉県袖ヶ浦市機材センターにて、当社が所有する小型可搬式スパイラルドレーン打設機を改良・開発した自走式スパイラルドレーン小型打設機の打設実験を行いました。実験に用いた打設機は、信幸建設(株)と共同で開発しました。
この実験により、自走式スパイラルドレーン小型打設機の高い打設性能が実証されました。

●自走式スパイラルドレーン小型打設機開発の背景

スパイラルドレーン工法は、液状化の可能性がある砂地盤中に、ポリエチレン製の円筒型ドレーンであるスパイラルドレーンを打設し、地震時に発生する過剰間隙水をドレーン内に早期に流入させることにより、過剰間隙水圧の上昇を抑制する液状化防止工法であり、平成元年に開発されて以来、約205万mの施工実績があります(平成18年3月31日現在)。

当社では平成9年に、旧法タンク及び、狭隘な箇所・高さ制限のある箇所における液状化対策として小型可搬式スパイラルドレーン打設機を開発しました。開発された打設機は、既設石油タンク周辺など狭い場所でも施工できるという特徴を有していましたが、搬入・組立に人力を必要としたために機械重量を軽量化せざるを得なく、その結果、反力不足が生じるという課題を残しました。また、ケーシングについても、ネジ継ぎ式のケーシングでは施工に手間がかかるため、新たなケーシングの開発も必要とされていました。

そのような背景を基に当社では、新たに開発した施工時間短縮が図れる伸縮可能なテレスコ式ケーシングを設置した、打設性能の高い自走式スパイラルドレーン小型打設機を開発しました。

旧法タンク…1977(昭和52)年に、容量1,000kl以上の屋外タンク貯蔵所の構造及び設備について技術上の基準が強化されました。この際、この技術基準の適用が猶予されていた1977年以前に建設された既存の屋外貯蔵タンクをいわゆる旧法タンクといいます。平成6年度に危険物の規制に関する政令等が改正されたことに伴い、タンク基礎地盤の安全性評価を実施した上で、必要に応じて液状化対策等を行なうことが義務付けられました。

●実験内容および結果

今回の実験において、主に次の2点の打設性能を実証することができました。

  • (1)打設機にパルスヘッド(鉱研工業(株)製)を搭載したことにより、ケーシンングに振動を与えることで打設性能が向上しました。また、従来の可搬式打設機は、機械総重量が840sと軽量であったため反力不足が生じましたが、新たに開発した小型打設機は機械総重量が重くなったため(実験機で7,200s)、反力が増し打設性能が向上しました。
    結果として、打設速度は既存の可搬式打設機と比べて、3倍以上も早いものとなりました。
  • (2)従来から使用されているケーシング(ネジ継ぎ式)と今回新たに開発した伸縮可能なケーシング(テレスコ式)の両方を用いて打設を行い、施工サイクルタイムの比較を行いました。
    その結果、テレスコ式のケーシングを用いた場合、ネジ継ぎ式のケーシングと比べて、サイクルタイムを約1/2〜1/3程度に短縮することができました。

また、実験に合わせて、振動・騒音の測定を行った結果、振動規制法及び、騒音規制法の基準値(振動:75dB、騒音:85dB)を下回っており、周辺環境への影響にも問題がないことも確認されています。

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実験で使用したスパイラルドレーン小型打設機

実験概要

打設機仕様
機械重量
7.2t
本体出力
55ps(0.25m3
ストローク
3.0m
旋回半径
2.0m
ケーシング仕様
ネジ継ぎ式(従来型)
φ114mm×3m×2本
テレスコ式(伸縮型)
外管φ140mm、内管φ114mm(引き伸ばし時5.7m)
使用材料
スパイラルドレーン材
有効径95mm
打設深度

GL-6m(ネジ継ぎ式)、GL-5.7m(テレスコ式)

打設状況

打設状況

●今後の展開

今回の実証実験は6m程度の打設深度でしたが、この結果から、10〜15m程度の打設深度に対応した実機製造の目処が立ったことを踏まえ、旧法タンク及び、狭隘な箇所・高さ制限のある箇所における液状化対策等を対象として、小型打設機を用いたスパイラルドレーン工法を広く提案して、地盤の液状化防止に貢献していきたいと考えています。