2006年11月29日
東亜建設工業(以下「当社」)は、東亜機械工業株式会社(社長:杉本邦明、本社:山口県下関市)、信幸建設株式会社(社長:小幡完治、本社:東京都千代田区)と共同で、トンネル坑内を自走しながら覆工コンクリート表面を噴霧養生することにより、コンクリート表面のひび割れの発生を低減させることが可能な自走式噴霧養生装置「レインボー」(特許出願中)を開発しました。
「レインボー」は、当社が施工を行った2つのトンネル工事「益田道路万葉トンネル工事」「筆山トンネル工事」において採用され、その有効性を示しました。また、現在施工中の「小川2・3号トンネル工事(発注:国土交通省九州地方整備局)」においても採用され、このたび現場に導入されました。
コンクリートは打込み終了後、一般に散水や養生マットによる湿潤養生が行なわれます。これは、乾燥収縮によるひび割れ発生防止と所要の強度発現を目的として、コンクリート表面の水分量を一定に保持し湿潤状態に保つことが有効であるからです。
山岳トンネルの覆工コンクリート※1施工の場合、トンネル形状がアーチ型であること、セントル(トンネル覆工用の移動式型枠)その他の施工設備でトンネル坑内が輻輳していること、あるいは坑内をダンプトラックやトラックミキサーなどの作業車輌が常時運行していることなどから、生コン打込み後15〜20時間程度でセントルを脱型せざるを得ず、効果的な湿潤養生を行なうことは困難であるのが実情でした。しかし、トンネル貫通前のトンネル坑内は「湿潤状態に保たれているとみなせる」と土木学会の施工指針でも示されており、セントル脱型後の湿潤養生は、これまで特に行なわれていませんでした。
しかし最近は、工事作業員の健康管理などを重視し、坑内の換気を保つ必要性から、トンネル貫通前にも外気を流入※2させるため、トンネル貫通前の坑内環境は従来と異なってきています。このため、セントル脱型後も養生のために湿潤状態の維持が必要となりますが、トンネル坑内の任意の場所を移動しながら覆工コンクリート表面を湿潤養生することができる装置やシステムは、これまで開発されていませんでした。
そこで当社では、汎用建設機械である油圧ショベルのブーム先端にアタッチメント式に着脱可能な噴霧養生装置を考案・開発しました。これらの機械・装置を組み合わせて自走式噴霧養生装置「レインボー」として実用化しました。
※1)覆工コンクリート:山岳トンネルでは、岩などがはがれ落ちるのを防ぐために、一般に天井部や側壁部にコンクリートを吹きつけます
※2)外気の流入:トンネル貫通後は通風により外気が流入し、トンネル内の乾燥が急激に進行して乾燥収縮が起こりやすく、その結果コンクリート表面に微細なひび割れが発生しやすいと言われています
今回開発・実用化したレインボーは、トンネル坑内の任意の地点に移動可能であり、噴霧ノズルから微細な霧状の水滴を噴霧することにより、覆工コンクリート表面の乾燥を防止し、コンクリート表面を適切な湿潤状態に保つことができます。
本装置は、以下の各機器より構成されます。
レインボーの特長は以下の通りです。
(1)拡張・収縮・傾動自在の噴霧アームを装備
(2)他の作業車輌の運行を妨げずに噴霧養生が可能
トンネル工事の特質のひとつとして、覆工コンクリート施工中にも他の作業車輌が頻繁に走行することがあげられますが、他の作業車輌の運行を妨げずに噴霧養生作業が可能です。
(3)噴霧量、噴霧速度の調整が可能
ノズルから噴霧される噴霧量を任意に調整できるとともに、装置走行系(油圧ショベル)は、通常の走行速度とは別に低速度域での移動速度を任意に調整可能としたため、トンネル内の乾燥状態に合わせた木目の細かい噴霧養生作業が可能です。
(4)任意の移動装置との組み合わせが可能
今回実用化したモデルは、油圧ショベル0.28m3級をベースマシンとしましたが、噴霧養生装置はアタッチメント式で脱着可能なため、その他の車輌系建設機械をベースマシンとして使用することも可能です。
レインボーは、当社が施工したトンネル工事現場においてその良好な施工性を確認できたことから、当社は今後、山岳トンネル覆工工事などを対象として、広く提案を行なっていく方針です。
また、噴霧する水の水温を調整することにより、温度変化にも対応した総合的な養生装置に発展させることも考えております。
実際のトンネル現場での噴霧養生効果確認結果の一例