2005年10月19日
東亜建設工業と関連会社の東亜土木株式会社(社長:山下唯明、東京都千代田区)は、自然再生に向けた技術開発を目的として、従来の要求機能を損なわずに生物共生機能をも兼ね備えた、根固めブロック「TOAエコプレス」と消波ブロック「TOAエコペンタ」(旧称:溝付ペンタコン)の開発を進めてきました。
今般、TOAエコプレスが、釧路港西港区島防波堤における「防波における背後盛土天端の起伏工」の試験工事に採用され、20t型TOAエコプレスの製作、据付工事を開始しました。今後3年間のモニタリングが計画されています。
また、TOAエコペンタは、2004年10月の台風23号で被災した高知県菜生(なばえ)海岸の新規離岸堤設置工事に採用され、現在、25t型TOAエコペンタの製作、据付が行われています。
藻場は、海藻が繁茂する生物生産力の高い場所であり、幼稚仔の生育場、魚介類の産卵場としての機能を有しており、非常に重要な役割を果たしています。しかし近年、藻場は磯焼け、海象変化などの原因により減少傾向にあり、海岸や港湾、漁港の施設を藻場の基盤として活用する動きが全国的に進められています。
また従来は、施設や構造物には本来の目的機能のみが求められていましたが、これに加えて生物や生態系に配慮した施設や構造物の計画、設計、施工が求められるようになってきています。海岸、港湾や漁港でも、生物との共生や自然環境再生を考えた施設、構造物の試験や実用化が進められてきています。
そこで、当社は関連会社を含め、従来求められてきた機能に加え、藻場造成機能など、生物や生態系に配慮した機能を有するブロックの開発を進め、その経過を調査観察し、これらの開発成果を海岸、港湾、漁港を管理する国や地方自治体に提案してきました。
―TOAエコプレス―
TOAエコプレスは、防波堤の基礎部分となる捨石基礎上に据え付ける、従来のコンクリート製根固めブロックの一種で、海藻の付着しやすい隅角部が多く、海藻の繁茂する表面積が大きい構造となっています。また、海藻の付着を促進させるために、ブロックの表面にコンクリート製の擬ポーラス板(エコベスト)20cm×20cm×5cmを貼り付けています。この板は、表面に砕石状の凹凸を有しているため、海藻の遊走子や卵が付きやすく、近傍に母藻がなくて自然に海藻の着生が期待できない場所で藻場を作るときにも有効です。また、あらかじめ人為的にこの板に種苗を付け、海中に沈設したブロックに貼り付けて海藻の繁茂を促進させることも可能となります。
TOAエコプレスは、平成15年3月に熊本県八代港に設置され、2年経過後には目標としたアカモクを中心とした海藻の繁茂が観察されています。
釧路港西港区 島防波堤での「防波における背後盛土天端の起伏工」の工事選定技術募集システム(平成16年度)に応募した結果、このTOAエコプレスが、25技術の中から選定された4技術の1つとして、実海域での試験工事に採用され、今回その据付作業を開始しました。(全体工期;平成17年8月〜12月)
この天端の起伏工は、防波堤の背後にコンブ類の海藻を繁茂させることを主たる目的としており、今後3年間のモニタリングが予定されています。
エコベストに繁茂する海藻
根固めブロック「TOAエコプレス」の設置イメージ
―TOAエコペンタ―
TOAエコペンタ(旧称:溝付ペンタコン)は、もともと隅角部など海藻の着生に有利な構造を持った消波ブロック(ペンタコン)の本体に溝をつけたものです。海藻がより固着しやすくなるとともに繁茂しても脱落しにくく、海藻の生育に好ましい構造の消波ブロックです。
ブロックに固着した海藻の繁茂を中心に、海藻を餌とするサザエ・ウニ・バテイラ貝が蝟集します。ブロックの溝は、これらの生物が魚類から身を守る隠れ家としても活用されます。また、大型の海藻群落は、群れをなして遊泳する魚類の休息場や隠れ家にもなります。
2003年3月に、千葉県富山町岩井海岸の突堤に設置する消波ブロックとして、TOAエコペンタが採用され、設置一年後の調査結果では、早くも脚部に付けた溝部(長さ:50cm×幅:5〜6cm×深さ:6〜10cm)にサザエ・ウニ・バテイラ貝(シッタカ)等などの磯根資源が集まり、また、ブロックの隅角部には、アラメ、ホンダワラ類の大型海藻が群落を形成し、周辺を小魚が群をなして遊泳しているのが確認されています。
今般、2004年10月の台風23号で被災した高知県菜生海岸の新規離岸堤設置工事に25t型TOAエコペンタが採用され、現在、その製作据付工事が行われています。(全体工期;平成17年5月〜11月)
TOAエコペンタの据付(高知県・菜生海岸)
「TOAエコプレス」の主な特長は、次の通りです。
「TOAエコペンタ」の主な特長は、次の通りです。
今後も、当社は関連会社を含め、生物共生型の施設や構造物の機能改善、性能向上を目指して、環境に貢献する技術の研究開発に取組むことを考えております。その成果を、海岸、港湾、漁港を管理する国や地方自治体をはじめとする関係者の皆様に、さまざまな自然環境再生技術という形で提案していきます。