再生PET短繊維補強コンクリートを開発
〜ペットボトルを再生利用した合成繊維でリサイクル促進にも貢献〜

2004年02月24日

  • ◆再生PET(ポリエチレンテレフタレート)短繊維の混入により、
    コンクリートのじん性改善・剥落防止に効果
  • ◆ペットボトルを再生利用した合成繊維「リプロファイバー・バベル」
  • ◆分散性・施工性にも優れた再生PET短繊維

東亜建設工業は、このたび、株式会社プラスワン(社長:櫛田 政雄、本社:福島県いわき市)と共同で、再生PET短繊維※1補強コンクリートを開発しました。

繊維補強コンクリートに使用する再生PET短繊維は、株式会社プラスワン社製の「リプロファイバー・バベル」(特許出願中)です。この繊維は、耐アルカリ性・耐熱性などの性能に優れるとともに、ペットボトルを再生利用した合成繊維なので、リサイクル促進により環境問題対策にも貢献できます。

再生PET短繊維で補強したコンクリートは、コンクリート全体に均一に分散した繊維により、コンクリートのじん性※2が向上するとともに十分な剥落防止性能が得られます。

※1 短繊維:繊維素材を長さ数ミリから十数ミリに切断したもの
※2 じん性:粘り強さのこと

再生PET短繊維「リプロファイバー・バベル」
再生PET短繊維「リプロファイバー・バベル」
(写真は繊維長30mmタイプ)

●開発の背景

近年、トンネルや高架橋などの構造物でコンクリート片の剥落事故が相次いで起こり、第三者に対する安全性を確保することが大きな課題となっています。また、トンネル覆工コンクリートなどでは、ひび割れ発生後に急激な耐力低下を生じさせないように、コンクリートのじん性確保が求められています。新設構造物においてこれらの目的を達成するためには、短繊維補強コンクリートが有効であると考えられています。

コンクリートに混入する繊維は、これまでに、ビニロン繊維やポリプロピレン繊維等が開発され実用化されていますが、今回当社が繊維補強コンクリートに使用する再生PET短繊維「リプロファイバー・バベル」は、ペットボトルの再生利用品という全く新しい短繊維です。

●再生PET短繊維「リプロファイバー・バベル」の特長

再生PET短繊維「リプロファイバー バベル」には、以下のような特長があります。

  1. リサイクル品
    ペットボトルを再生利用したリサイクル品です。
    (エコマークおよびPETボトルリサイクル推奨マーク使用を申請中)
  2. 耐アルカリ性・耐熱性に優れる
    十分な耐アルカリ性・耐熱性・燃焼ガスの安全性などを有しており、日本道路公団「トンネル施工管理要領(繊維補強覆工コンクリート編)」の「繊維および繊維補強覆工コンクリートの基準」に適合しています。
  3. 分散性・施工性に優れる
    水との親和性が高く、コンクリート中での分散性に優れた短繊維であり、コンクリートとの付着も良好です。

●再生PET短繊維補強コンクリートの概要

今回開発した再生PET短繊維補強コンクリートは、短繊維による架橋効果を利用し、コンクリート片の剥落事故を未然に防ぐことを可能にするものです。また、短繊維を混入することで、コンクリートのじん性を大幅に改善できることを確認しています。その他、土間コンクリートや法面吹付けコンクリートなど、様々な用途に用いることができます。

再生PET短繊維補強コンクリートは、コンクリートを練り混ぜる際に短繊維を投入して製造しますが、現場で生コン車に簡単に投入することもできます。短繊維の比重は鋼繊維に比べて小さく、投入作業労力は軽減されます。また、混入された短繊維はコンクリート中で均一に分散するので、短繊維の混入の前後においてコンクリートのフレッシュ性状の変化は小さいことを確認しています。

●再生PET短繊維補強コンクリートの特長

再生PET短繊維補強コンクリートには、以下のような特長があります。

  1. リサイクル推進に貢献するコンクリート
    再生PET短繊維を活用するので、使用済みペットボトルのリサイクルに貢献します。(繊維のエコマーク、PETボトルリサイクル推奨マークの使用を申請中)
  2. 繊維の架橋効果による剥落防止性能
    再生PET短繊維を混入することで、コンクリートにひび割れが発生しても、ひび割れの界面を繊維がつなぎますので剥離・剥落が防止されます。
    (直接引張試験・鉄筋の電食試験により確認しています。)
  3. コンクリートのじん性改善
    再生PET短繊維を混入することで、コンクリートのじん性を大幅に改善できます。
    (曲げ試験により確認しています。)
  4. 発錆のない合成繊維補強コンクリート
    再生PET短繊維補強コンクリートは、鋼繊維補強コンクリートのように発錆による美観の低下がなく、海洋環境下においても腐食の心配がありません。
  5. 良好な分散性・施工性
    再生PET短繊維は、軽量であるため現場で生コン車に簡単に投入できます。コンクリート中での分散性にも優れており、ポンプ圧送や吹付けなどによる施工も十分可能です。
    また、短繊維補強コンクリート製造時の省力化・品質向上に向けて、短繊維の定量供給装置も開発しました。
  • 直接引張試験状況 直接引張試験状況
  • 曲げじん性試験状況 曲げじん性試験状況

●今後の展開

当社は、様々なリサイクル材料を建設材料として有効に活用するように取り組んでおります。再生PET短繊維補強コンクリートもその一つとして、今後、高架橋やトンネルにおける躯体コンクリートや覆工コンクリートをはじめとして、広く各方面に活用していただけるよう、実用化に向けて、更なる性能向上とコストダウンを図っていく方針です。