「ソイルセパレータ工法トータルシステム」を完成
〜浚渫土砂100%リサイクルシステム〜

2003年08月25日

  • ◆浚渫土砂を100%リサイクル可能に(浚渫土砂のゼロエミッション)
  • ◆分級・脱水された砂に含まれるシルト・粘土分含有率は5%以下
  • ◆固液分離されたシルト・粘土分は容易に脱水可能
  • ◆どのような浚渫土砂にも対応可能

ソイルセパレータ工法トータルシステム
ソイルセパレータ工法
トータルシステム
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東亜建設工業は、港湾、河川、湖沼、ダムなどから大量に発生する浚渫土砂を100%有効利用するためのシステムとして「ソイルセパレータ工法トータルシステム」を完成させました。

このト−タルシステムは、既に実績のある浚渫土砂を砂分とシルト・粘土分に分級して砂分を脱水する分級・脱水システム(ソイルセパレータ工法)に、新たにシルト・粘土分からなる泥水を安価に連続処理できる固液分離システムを加えたもので、シルト・粘土分をも建設材料として容易に有効利用できるように図ったものです。

本年7月に固液分離システムの性能確認実験を行ない、本システムの分離性能および安全性を確認し、既に実績のある分級・脱水システム(ソイルセパレータ工法)と合わせて「ソイルセパレータ工法トータルシステム」として完成させました。

※分 級 :
水などの液体中で重力や遠心力などの差などを利用して、固体粒子などを粗粒群と細粒群に分ける操作を行なうこと。
※固液分離 :
液体中で互いに反発しあっている固形微粒子を凝集剤によって接着させてフロック(集合体)を作り液体と分離すること。

●システム開発の背景

当社は、循環型社会構築に貢献するため、船舶の大型化に伴う航路・泊地の浚渫や埋没対策としての維持浚渫などの浚渫活動から大量に発生する浚渫土砂から良質砂を取り出し、建設材料として有効利用する「ソイルセパレ−タ工法」を2001年3月に完成させました。

ソイルセパレ−タ工法は、浚渫土砂に加水して泥水化し、遠心分離装置の一種であるソイルセパレ−タにより、砂分泥水とシルト・粘土分泥水とに分離(分級)した後、更に砂分泥水を脱水して砂を取り出すシステム(分級・脱水システム)です。

ソイルセパレ−タにより分級された直後の砂分とシルト・粘土分とはそれぞれの成分を主体とした泥水状態ですが、砂分泥水については脱水コンベアにより含水比25%程度に脱水され、直ちにダンプ等で積込・運搬することができます。砂分の有効利用については、2002年度の関門航路浚渫土分級工事に適用され、約30万m3の浚渫土砂を分級し、覆土量約20万m3に相当する良質砂(シルト・粘土分含有率が5%未満の砂)を取り出すことに成功しました。この分級工事は、高い分級性能が評価されて2003年度の社団法人日本港湾協会「技術賞」を受賞しております。

以上のように、分級された砂分泥水につきましては有効利用ヘの道を拓くことができましたが、泥水状態のシルト・粘土分の処理をどうするかが課題として残っておりました。

●固液分離システムの概要と特長

その解決策としてこの1年間に渡って研究開発を行い、泥水状態のシルト・粘土分を建設材料として有効利用が図れる固液分離システムを完成させることができました。この固液分離システムの開発コンセプトは、「シルト・粘土分からなる大量の泥水を低コストで処理し、材料化を図る」というもので、凝集剤注入装置、迂流式水路、フロック分離箱から構成されており、有限会社中道環境開発(社長:中道 和徳、熊本県水俣市)と共同開発したものです。

シルト・粘土分からなる泥水の一般的な固液分離方法としてはシックナーがありますが、処理容量が小さい、処理コストが高い等の問題があります。

今回開発した固液分離システムは、大量の泥水を簡単な設備により連続処理することで大容量・低コスト化を実現しました。

また、泥水に適正量の凝集剤を添加・攪拌し、脱水処理が容易に可能となる大きさに十分に粗粒化されたフロックを効率良く低コストで生成することができることから、利用目的に合った減容化処理により、養浜や盛土などの建設材料として有効利用することが可能となります。

※フロック:液体中に分散している固体粒子が凝集剤により形成した大きな集合体

今回開発した固液分離システムには、以下のような特長があります。

  • (1)シルト・粘土分からなる大量の泥水を連続的に処理できます。
  • (2)迂流式水路により凝集剤を効率良く攪拌・混合するため、凝集剤の添加量を最小限に抑えることができます。
  • (3)凝集したフロックは、十分に大きく脱水処理が容易です。
  • (4)固液分離後の余水は、施工中の分級用加水材として循環利用することもでき、最終的に濁りや有害物質を含んでいないことを確認した後、環境上安全に排水します。
  • (5)簡単な設備で連続処理するため、固液分離コストは非常に安価です。

固液分離システム(今回新開発)

固液分離設備(凝固剤注入装置、迂流式水路、フロック分離箱)
固液分離設備
(凝固剤注入装置、迂流式水路、フロック分離箱)

  • 固液分離状況固液分離状況
    (フロック分離箱内)
  • 余水の排水状況余水の排水状況
    (フロック分離箱側面)
  • フロックの自然脱水状況フロックの自然脱水状況
    (フロック分離箱内で1日放置)

●ソイルセパレータ工法トータルシステムの完成

ソイルセパレータ工法トータルシステム
ソイルセパレータ工法
トータルシステム
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今回開発した固液分離システムと既に実績のある分級・脱水システム(ソイルセパレータ工法)を組み合わせることにより、浚渫土砂を100%リサイクル可能な「ソイルセパレータ工法トータルシステム」を完成させました。

取り分けた砂およびシルト・粘土は、養浜や盛土などの建設材料として有効利用することが可能です。

またソイルセパレータ工法トータルシステムでは、浚渫土砂の性状や利用目的により、分級・脱水システムのみ、固液分離システムのみ、トータルシステム(2つのシステムの組み合わせ)と、3パターンのシステム適用が可能です。

●トータルシステムにより期待できる効果および今後の展開

ソイルセパレータ工法トータルシステムにより、以下のような効果が期待できます。

  • (1)浚渫土砂の100%リサイクル(浚渫土砂のゼロエミッション)
  • (2)土砂処分場の延命化
  • (3)海砂や山砂などの天然資源採取による自然環境負荷の低減
  • (4)安価に処理することによる建設材料購入コストの低減
  • (5)ダイオキシン類汚染底泥に対する中間処理技術への有効利用

当社は今後も引き続き、浚渫土砂のリサイクル技術「ソイルセパレータ工法」を積極的に提案し、循環型社会の構築、ひいては地球環境負荷低減に貢献していく考えです。