浚渫土砂分級システム「ソイルセパレータ工法」を完成

2002年05月09日

  • ◆浚渫土砂を養浜や盛土などの各種建設材料として、リサイクル可能に
  • ◆分級された砂に含まれるシルト/粘土分は5%以下
  • ◆広範囲の含泥率の浚渫土砂に対応可能

■このニュースのポイント■

港湾、河川、湖沼などには土砂が溜まります。この土砂を取り除く作業を浚渫(しゅんせつ)といいます。こうして取り除かれた土砂には、水や粘土がたくさん含まれており、今までは埋め立て地などへ埋め立てるなど、限られた用途しかありませんでした。その一方で、海浜や河川の堤防などを築く材料となる砂は、砂の堆積している海底をわざわざ掘ったり、山を削ったりして採取していました。

東亜建設工業は、浚渫した土砂の利用範囲を広げるために、浚渫した土砂から砂と粘土や水を分別する技術を確立しました。こうして分別した砂は、様々な用途に使用することができ、自然環境保護の面から見ても自然にやさしい工法です。

東亜建設工業は、港湾、河川、湖沼などから発生する砂を含む浚渫土砂を、浚渫土砂分級船または陸上の浚渫土砂分級装置にて分級し、取り出した砂を養浜や盛土などの各種建設材料としてリサイクルできるシステムの開発に取り組んできましたが、このたび「ソイルセパレータ工法」として完成させました。

分級:水または空気などの液体中で重力や遠心力などの差などを利用して、固体粒子などを粗粒群と細粒群に分ける操作を行なうこと。コンクリート用骨材の選別や泥水・濁水処理などで使用される方法。

  • ソイルセパレータ外観ソイルセパレータ外観
    (処理能力450m3/hr)
  • ソイルセパレータと脱水コンベアの外観ソイルセパレータ(処理能力16m3/hr)と
    脱水コンベアの外観

●背景

現在まで、浚渫土砂はその発生量が大量であるため、そのまま埋立地に投入するのがもっとも経済的な処分方法と考えられてきました。しかし今日、埋立地を建設する場所が限られてきており、このような処分方法に対して種々の制約が生じてきています。また近年、自然保護の立場から、海砂や山砂などの各種建設材料の採取を規制する場所が増えてきており、浚渫土砂を建設材料としてリサイクルすることの重要性が叫ばれつつあります。

従来の土砂を分級する技術としては、振動フルイやサイクロン等が考えられますが、大量の浚渫土砂に対応できるような大能力のものがなく、コスト面でも問題がありました。

こうしたなか、当社は以前よりさまざまな方法で浚渫土砂を分級するシステムの開発に取り組んできました。このたびその一つ「ソイルセパレータ工法」を完成させました。

●工法の概要と特長

施工は、土運船で運ばれてきた大量の浚渫土砂を、浚渫土砂分級船上の調泥槽に投入し、その単位体積重量を調整した後、遠心分離装置の一種であるソイルセパレータを用いて砂を取り出します。取り出した砂は、養浜や盛土などの各種建設材料にリサイクルできます。

分級装置の中心部をなすソイルセパレータ単体では、含泥率によって浚渫土砂の適用範囲が限られていましたが、前処理として粘土分塊機、後処理として脱水ベルトコンベアー(赤江機械工業(株)製)を加えることにより、広範囲の含泥率の浚渫土砂にも対応できるシステムとなりました。

分級で取り出された砂に含まれるシルト/粘土分は5%以下となっており、非常に品質の高い砂となっています。

今回完成させた「ソイルセパレータ工法」で分級された砂のコストは、試算した範囲では山砂などの購入砂よりも安く、建設材料購入コストの低減につながります。

本工法には、以下のような特長があります。

  • (1)大量の浚渫土砂を連続的に処理できます。
    分級装置の中心部をなすソイルセパレータは、最大約3,000m3/hrの泥水を処理するタイプのものまであります。
  • (2)分級された礫/砂分は、建設材料となるため、そのまま所定のストックヤードや利用先に運搬可能です。
  • (3)オーバーフロー水(シルト粘土分のみの泥水)は、低コストの高速固液分離機で処理します。

●本工法により期待できる効果および今後の展開

本工法により、以下のような効果が期待できます。

  • (1)主として埋立処分とされていた浚渫土砂のリサイクル推進
  • (2)養浜や盛土などとして使用する海砂や山砂などの天然資源採取による自然環境負荷の低減
  • (3)浚渫土砂のリサイクルによる建設材料購入コストの低減
  • (4)建設残土のリサイクル促進

など

当社は今後、天然資源の消費抑制につながる「ソイルセパレータ工法」を
積極的に提案していく考えです。