トップメッセージ

代表取締役社長 早川毅

新・中期経営計画の基本的な考え方

当社は創業者浅野総一郎が残した言葉「社会に益する」という志を体現すべく、社会資本整備に携わる会社として時代のニーズにあわせて領域の拡大を続けながら成長を続けてまいりました。
前中期経営計画においては、2030年のあるべき姿として長期ビジョン〈TOA 2030〉「社会を支え、人と世界をつなぎ、未来を創る」を定め、更に財務的には2030年度の売上高2,800億円、営業利益135億円規模を目指していくことといたしました。
2023年度からはじまる新中期経営計画においては、2030年のあるべき姿を目指して得意分野の一層強化と更なる領域の拡大に努め、最終年度の2025年度に売上高2,670億円、営業利益120億円を目指します。
長期ビジョンを実現するために、新中期経営計画期間中に事業戦略と人材戦略を融合させた経営基盤を構築していくことを基本方針としています。特に、事業規模の拡大を支える人材の質と量の向上に努めます。
カーボンニュートラル、GX、DX、人権、ダイバーシティ&インクルージョンなどは、社会から要求される評価基準も刻々と変化していきますが、「ESG経営の深化」を大きなテーマとして捉え、これらに機敏に対応していきます。

既存事業の高度化

近年の自然災害の激甚化を受けて防災・減災の必要性が一層高まる中、当社として得意とする港湾土木を中心に人々の生活を守るべく社会ニーズに対応していきます。
また、国内建築で物流・住宅・福祉・PFIといった得意分野での強みを更に強化すべく差別化できる技術の開発やノウハウの蓄積に取り組んでおり、今後は土建一体の大型プロジェクトが増加することも見込めます。
国内土木部門、国内建築部門に2023年4月より営業本部を新設しました。臨海部に強みを持つ土木部門のお客様から建築工事を受注すべく土建連携して取り組んでまいります。
国際部門においては、53か国での豊富な経験を活かしながら、強みを発揮できる地域で、港湾工事だけでなく陸上工事などにも取り組み、多工種化を進めていきます。

事業領域拡大の加速

国内土木部門においては、防衛・米軍関連の整備事業が増加することが見込まれており、他部門と連携しながら多様なニーズに対応していきます。
また、陸上土木や洋上風力建設事業などにも積極的に取り組み、領域の拡大を図ります。
国内建築部門においても、これまで実績のあるオフィスや医療、地方都市の再開発や斎場・給食センター以外のPPP/PFI事業などに取り組み、更なる多様化を推進していきます。
国際部門においては建築工事の拡大を目指しています。現地法人を設立し、現地に密着した営業を展開していきます。

経営基盤の強化

経営基盤の強化のためには、幸福度の高い社員によって企業価値を持続的に向上させるサイクルを構築することが重要です。
そのために、まずは当社の「人材育成基本方針」に基づき多様な人材の確保と育成に力を入れていきます。具体的には、多様な価値観を受け入れ、ダイバーシティ&インクルージョンを実現し、すべての社員がいきいきと活躍する「社員の幸福度」の高い組織の構築を目指し、ライフサイクル全体を通した長期的な人材の活躍を後押ししていきます。
さらに、「人的資本経営」をキーワードとして、若手作業所長の抜擢や柔軟なジョブローテーションなどにより個人の希望と適正に配慮した職場配置と育成を行います。
これらの実現のための人材戦略課を新設し、具体施策の立案・実施に取り組んでいくこととしました。
また、生産性の向上にも継続的に取り組みます。利益生産性を重視した案件の選別、DXの推進による現場の直接部門・間接部門それぞれの効率化も進めます。DXに関しては、全社員のデジタルリテラシーの向上に取り組み、基礎力を養成していきます。
高度なガバナンス体制の構築にも取り組んでおり、監査等委員会委員長を独立社外取締役に変更することを予定しています。ガバナンスを支える根底にはコンプライアンスがあり、安全で高品質の社会資本を提供し社会に貢献することを最優先に考える意識を、すべての役員・社員に共有させるべく社員教育を徹底します。

カーボンニュートラルの推進

2020年の目標設定から2年が経過したところですが、Scope1+2については2022年度で約5%削減となっており、SBT目標に沿って順調に推移しています。
一方、Scope3については、2022年度は現在集計中ですが、2021年度は約22%増加する結果でした。これに対しては、建築物のZEB化などに積極的に取り組んでいます。
また、現時点では省エネ施工の推進や低炭素型の建設機械や燃料の採用などを中心に温室効果ガスの削減に取り組んでおりますが、今後の更なる削減にあたっては研究開発も必須となっています。
低炭素型コンクリートなどの技術開発に注力し、社会のニーズに極力早期に対応できるようにすることで新たなビジネスチャンスも創出していきたいと考えています。
また、自社での努力はもちろんですが、更なるサプライチェーンとの対話と連携により、2030年の目標達成に向けて取組みを継続していきます。

ステークホルダーとの建設的な対話を通じた継続的な企業価値の向上

当社は株主、お客様、協力会社、社員など様々なステークホルダーと建設的な対話を続けながら適宜施策を改善しています。
一例をあげますと、昨年度投資家・株主との対話を重ねる中で「PBR向上に向けたアクションプラン」を策定しました。
当社は本業で得た利益を再投資して更なる成長につなげることを重視して、新中期経営計画期間中に200億円の投資枠を設定しておりますが、株主還元の安定と一層の充実も重視しており、株主還元などに課題があるという株主・投資家からのご意見をもとに改善すべく、当社の考え方をわかりやすく開示したものです。
この例に代表されますように当社はすべてのステークホルダーとの対話を重視しており、頂いたご意見を参考にしながら継続的に企業価値の向上につとめています。

最後に

私たちの出発点である海には、まだまだたくさんのビジネスチャンスがあります。特に、海に囲まれている日本では、洋上風力発電をはじめとした創エネや、生物多様性の保全、食料の安定確保、さらに激甚化する自然災害に対する防災・減災、温暖化による海面上昇対策など、暮らしや社会を守るために成すべきことはたくさんあります。時代の変化や社会のニーズを見定めながら、東亜建設工業はマリコンのリーディングカンパニーとしての自負を胸に、これからも海から未来へ、新たな挑戦を続けてまいります。


代表取締役社長 早川 毅