概要
港口や湾口部は、船舶航行のために外海に開いた状態になっており、そこから津波や高波が浸入すると、大きな災害が発生する危険性があります。このような場合、水際線に防潮堤を設けて、陸域を津波や高波から守る方法が一般的ですが、陸と海が遮断されるため、港湾では物資の搬出入に支障をきたし、護岸では親水性がなくなると共に、景観も損なうこととなります。
直立浮上式防波堤は、このような問題を解決するため、常時は海底面下に格納された鋼管を津波や高波の来襲時に海面上に浮上させ、防波堤として機能する新しい概念の可動式防波堤です。
直立浮上式防波堤を港口等に設置することにより、長い水際線に巨大な防潮堤を設けることなく、津波や高波から陸域を守ることができます。港湾の機能を維持することができ、親水性や景観を損なうことがないため、海辺の景観を生かしたまちづくりを進めることができます。
特長
- 1)船舶航行が自由
- 平常時は海底地盤内に格納されているため、船舶の航行を妨げません。
- 2)航路閉鎖・開放時間の短縮
- 浮力タンク内蔵の上部鋼管は有効重量が小さいため、わずかな送・排気量により数分程度で浮上・降下させることが可能です。
- 3)海水交換性が良好
- 潮汐や海流を妨げることがないため、港内の海水交換性が良好です。
- 4)津波・地震に対して粘り強い構造
- 重力式構造物と比較して、海底地盤中に深く根入れされた鋼管構造であるため、津波や地震時の外力に対して粘り強く抵抗します。
- 5)遠隔操作システムにより可動
- 浮上作動指令は、遠隔操作で行うため、操作員、監督員の安全が確保出来るとともに、確実な操作が可能です。
- 6)システム、ハードの二重化構造による確実な可動
- 確実な浮上を担保するため、送気管、送気システムなどの重要な設備は、バックアップによる二重化構造とします。
- 7)維持管理が容易
- 陸上設備は大掛かりな駆動装置を必要としないこと、また上部鋼管が下部鋼管内に格納されている環境下では、腐食・劣化が少なく維持管理が容易です。
実績
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- 和歌山下津港海岸(海南地区)船尾側津波防波堤(直立浮上式)築造工事
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- 工期:平成23年11月〜平成26年1月
- 下部鋼管:φ3,000mm,L=29.7m 3本
- 上部鋼管:φ2,800mm,L=28.0m 3本
その他
■関連特許
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可動式防波堤の振動低減構造および可動式防波堤の設置方法(特許第6757577号)
- 特許権者:(株)大林組,日鉄エンジニアリング(株),東亜建設工業(株),エム・エムブリッジ(株)
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可動式防波施設(特許第6539815号)
- 特許権者:エム・エムブリッジ(株),(株)大林組,東亜建設工業(株),日鉄エンジニアリング(株),(国研)海上・港湾・航空技術研究所
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可動式防波堤および可動式防波施設(特許第6369833号)
- 特許権者:エム・エムブリッジ(株),(株)大林組,東亜建設工業(株),日鉄エンジニアリング(株),(国研)海上・港湾・航空技術研究所
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可動式防波堤の回転防止構造(特許第6300199号)
- 特許権者:(株)大林組,(国研)海上・港湾・航空技術研究所,日鉄エンジニアリング(株),東亜建設工業(株),エム・エムブリッジ(株)
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関連技術
- 杭打設施工管理システム(特許第5767131号)
- 特許権者:東亜建設工業(株)、(株)大林組、日鉄エンジニアリング(株)、エム・エムブリッジ(株)